(自分が観たフットボールの試合を自分の視点で自分の思ったことを表現してみる。ちょっと記事のような形式で書いてみる。)
7/3 イングリッシュ プレミアリーグ #MCILIV マンチェスター・シティ 対 リバプール。
結果は 4 - 0 でシティの圧勝。
すでにリバプールはプレミアリーグ優勝を決めおり、この試合がリーグにもたらすものは少ない状況ではあったが、ここ最近リバプールにはカモにされていたシティにとっては嬉しい勝利になった。
試合終了の笛が鳴った後にクロップと握手を交わすペップの嬉しさや「どうだ!」という様子が、この試合に勝ったことの意味を物語っている。
来季を見越した大きな変化
この試合、今までのシティと大きく異なる点があった。
フォーメーションが今まで見慣れていた 4-3-3 から、4-2-3-1 に変更されていた。攻撃もディフェンスもまったく今までと異なるポジショニングと役割が与えられていた。
今までのシティを攻略することに慣れていたリバプールは相手の新しいフォーメーションに対応しきれず、結果は惨敗。 この結果を受けてクロップは、次回対戦までにペップの出した新しいフットボールに対するソリューションを提示する必要に迫られることになった。
新型コロナウイルス感染にて3ヶ月間の中断を経て再開されたプレミアリーグ。 おそらくペップはリバプールの優勝は時間の問題である現状を見て、来季に向け優勝するための策を練り始めていただろう。
シティの監督になって4シーズン目。2017-18, 2018-19 とリーグ優勝をしたが、今シーズンはリバプール独走を許し、相手もシティのフットボールに対応できるようになってきた。同じやり方では勝てない。 今こそ変化が必要だと思ったに違いない。
ペップの出したソリューションはフォーメーションを変えることだった。
4-3-3 から 4-2-3-1 へ
リバプール優勝が決定した6/25の31節からフォーメーションを 4-3-3 から 4-2-3-1 に変えている。 監督を務めたバルセロナ、バイエルン、そしてマンチェスター・シティとペップのフォーメーションは 4-3-3 だった。
わかりやすい違いは、センターバック(CB)の一列前の人数の違い。ピボーテ1名かボランチ2名かの違い。
自らもバルセロナでの選手時代ピボーテを務めたペップにとっては、ピボーテの重要性やそのポジションの持つ美学を理解し尽くしていたはず。 そのピボーテをなくすということは、大きな発想の転換だったのではないか。
自らの経験をも壊すようなこの変化に目を見張った。
リージョとの仕事
このシステム変更とリージョのアシスタントコーチ就任とは無関係ではないはずだ。
アルテタがアーセナル監督就任し、空きとなっていたポジションにリージョを招いた。
ヴィッセル神戸でも短期間の監督を務めたリージョは、ペップにとっていつかは一緒に仕事をしたい尊敬すべき人物。 はじめてペップが監督としてリージョと一緒に仕事をする。リージョを慕うペップにとってはついに訪れた時だった。
リージョのアシスタントコーチ就任の6/9から、4-2-3-1 を試合でお披露目する6/25までの間、ペップとリージョは議論を重ねたに違いない。
今までのペップの経験をも超える大胆な発想の転換は、リージョとの共同作業の上に成り立った。
ソリューション フォーメーションと役割の変更
このフォーメーション変更はリバプール戦では効果的だった。
前半、リバプールの両サイドバック(SB)は一度もファイナルサードに侵入してのクロスを上げていない。 それだけSBが上がることが許されなかった状況だった。
リバプールのストロングポイントの1つはサイドバックの展開力と攻撃参加だろう。そこを発揮させなかったのは、この戦術が見事にハマったことと言えるだろう。
以前とのポジションの違い
ボランチが2枚になっている。2名のボランチは2CBの一列前で間に入るようにポジションする。 試合ではロドリとギュンドアンが入っていた。今まではロドリ1人がいた所に、横並びに2名いるようになっている。
そのため 2CB の幅は以前よりも広く取るようにポジションしていた。
SBは一番外側のレーンにポジションするように変わっていた。なるべくピッチの幅いっぱいを使えるようにするポジション。 以前ではいわゆる偽サイドバックとしてピボーテと同列でハーフレーンのあたりで、ピボーテをサポートするようにポジションしていた。(偽サイドバックは選手によって変えており、左SBがメンディの場合は行わず、ウォーカーが行う)
攻撃側ではトップ下の位置、中央のレーンに1人ポジションする。ここにはデ・ブルイネがいた。リバプールのフォーメーションは 4-3-3 なので、ちょうどリバプールのピボーテと対峙するポジションになる。
サイドアタッカーは以前では最も外側のレーンで幅を作って1対1を仕掛けられるポジションだったが、1つ内側のハーフレーンにポジションしていた。ちょうど相手CB-SB間にいる。
このように大幅にそれぞれのポジションが変わっており、レーンの立ち位置も変わるので、それにともなって求められるタスクも変わってくる。
ビルドアップ
4-2-3-1 での特徴的な点はビルドアップだろう。
ペップは攻撃時、後方からボールをつないで敵陣に入り押し込んでいくことを志向している。
そういう意味でビルドアップは非常に重要であり、確実に前進するためのルール、各選手のポジショニング、役割など約束事を明確に決め、練習で再現性を上げ、試合で表現できるようになる。
この膨大な作業を週2試合のタイトなスケジュールの中、これらのことを新しく実行していることは驚くべきことだろう。
2枚になるので選択肢が増え、GK-CB-ボランチ間のボール回しに安定感が出た。
リバプールの前線はフィルミーノ、サラ、マネの3名。2CB+2ボランチ 計4名で、4対3の数的優位を作る。必ず1人余るのでパスが通せる。
今まではピボーテ1名とCB2名で三角形を構成してパスをやり取りするような立ち位置だったが、2ボランチになったことで頂点が2つある2つの三角形が作られ、より多くのパスコースが生まれるようになっている。
ハイプレスに来たらサイドが必ず空く
リバプールは前線からのハイプレスが特徴でもあるので、インサイドハーフが1つ前にプレッシングに行って、2CB+2ボランチとの4対4になるケースもあった。
その際は必ずどちらかのSBがフリーになっているのでそこにパスする。 SBは一番外側のレーンにポジションしており、パスを受けた際、前方には敵がいない状態なので、ドリブルで駆け上がれる。そうやって何度もリバプールのファイナルサードに侵入して行き、チーム全体も敵陣に侵入できている。
以前は、CBもしくはピボーテからの縦パスが攻撃のスイッチになっていたが、中央部の狭い部分へのチャレンジになるため、リスクの高いパスになる傾向があった。 今回の変更によって選択肢がサイドに特定されるため、パスの判断の仕方が単純化された。選手としては迷うことなくプレイできる様になり安定感がでたとえいるだろう。
なぜサイドが空くのか
どちらかのサイドバックは必ずフリーでボールを受け前進できる。
なぜこういう事が起きるかというと、相手のSBをピン留めしているからである。
リバプールのディフェンス陣からすれば、ワントップに対しては数的優位性を保つため2CBでマークしておきたい。そして、SBはハーフレーン敵がいるので、CBとどちらがマークするか迷うところだが、前述の理由からCBにはマークを任せておけず自らがマークする。この時点で自らのマークが目の前にいるので、前方の守備のサポートできない。目の前のマークを外して前方に行けば、CBが釣り出されるシチュエーションになりリスクが高まるから前に出ていけない。
そういうジレンマを抱えたままリバプールは試合の終盤まで解決策を見いだせずにいた。
偽サイドバックからボランチ2枚へ
今までのペップの戦術におけるSBは外側のレーンにはおらず、ピボーテのサポート的な役割を求めていた。 左SBのウォーカー、右SBシェフチェンコが担っていた。 (メンディだけは特別で、そのクロスのスキルを活かすために左SBだけ外側のレーンにポジションさせていた。)
いわゆる 偽サイドバック である。
高く上がらずビルドアップに関わりボールを繋ぐ役割だった。ただ、あくまでもサポートの役割で、縦パスを入れるのはピボーテやCBが行っていた。
それを大胆に、外側に張らせてボールを前進させる、アタッキングサードでのクロスをタスクにガラリと変えた。
これにともなって、以前であればサイドに張って1対1を仕掛ける役割だったサイドアタッカーをハーフスペースにアプローチして敵SB-CBを混乱させる役割に変わっている。
偽サイドバックを捨てて2ボランチにしてよりビルドアップを強固にした印象を持つ。
この変化が効果を表すには時間が必要
4-2-3-1 への変更は31節チェルシー戦から行われている。
この試合、シティはチェルシーに負けてリバプールの優勝が決まるわけだが、負けられない状況だったシティがフォーメーション変更を実行したことより、変化への決断は硬かったと思われる。
リバプール戦は快勝できたが、チェルシー戦では負けている。
ポジションとタスクの大幅な変更がチームに馴染む時間はまだまだかかると思われる。
ただ少なくとも来季2020-21シーズンは、この 4-2-3-1 のフォーメーションでペップは望むことはもう決心しているだろう。
この変更が成熟し、再びペップがどんな驚きを見せてくれるのか今から楽しみである。