つれづれスタートアップ#4 ベンチャーナウ連載


今回もベンチャーナウに連載していた第4弾の文章を紹介します。

今回はチーム構成ですね。新規サービス開発を達成する人の配置やスキルセットについて述べています。スタートアップのチーム作りや新規事業の人員採用にも参考になる内容になっていると思います。

2013年時点での私の考え方のとして読んでいただければ。


良いチームってなんだろう? ― スタートアップのチーム構成

今回はチーム構成について考えてみたいと思います。自分が創業者としてこれからチームを作る立場の方へ、考える材料を提供できたらと思います。

スタートアップの創業時は必ずチームを作ります。1人ではなく大体2~3名、多くても4名程度でしょうか。この少ない人数で初期のサービスを作り、次の資金調達可能な段階まで成長させなければなりません。

シード期のスタートアップに参加することは、メンバーが人生を考えながらリスクを取って関わってくるので、簡単に入れ替えたり後戻りしたりできない話です。

シード期にどんな人たちでチームを構成すれば良いのか、どういった人が必要なのか、自分なりの基準を持って慎重に進めたいところです。

私の考える、一般的なスマートフォンアプリもしくはWebサービスを提供する、シード期のスタートアップを想定した場合のチームに必要な要素をあげます。

  • 開発
  • デザイン
  • マーケティング

開発

開発は作りたいものを実際の製品・サービスとしてアウトプットする作業です。技術的知識と経験が必要です。これがなくては成り立ちません。

デザイン

デザインは見た目のデザインだけではなく、ユーザ視点を持ってサービスを評価し、あるべき姿を定義するプロダクトデザインを行います。最近ではリーンスタートアップの考え方が常識化しており、実際使ってくれるユーザを見つけ検証、変更の繰り返しを行います。

ユーザを理解し製品・サービスに反映するスタンスが求められており、シード期に確実に成長するためにデザインの要素は非常に重要になってきていると思います。

マーケティング

最後のマーケティングは、製品・サービスをターゲットに正しく届け、売上をあげる作業です。せっかく思った通りの製品・サービスができてもそれを知ってもらえなければ存在していないことと同じですし、間違ったターゲットに認知を促しても狙った売上はあげられません。

3つの要素

この3つの要素がそれぞれ必要だとして三角形を描きます。実際サービスの特徴やビジネスモデルによって要素の重きは変わると思いますので、あくまで一般的なモデルとして捉えてください。

この三角形が成長に必要な範囲で、これをチームで埋めます。チーム3名がこの三角形を均等に埋めることができれば、以下の様になるでしょう。

基本形

3つのスキル範囲 基本形

メンバーはエンジニア、プロダクトマネージャー、セールスマーケティングという一般的によく呼ばれる役割・職種になるでしょう。

このようにメンバーが均等に三角形を埋めていれば、「バランスの良いチーム」といえますし、三角形の埋まっていない部分が少なければ少ないほど必要な要素が揃っていることになるので、成長の可能性が高いと思われます。

必ずしもメンバーの埋める範囲が均等である必要はなく、最終的に三角形のすき間が少なくなるようなメンバー構成ができていれば良いと思います。人によっては、肩書きにとらわれず開発もデザインもできれば一人でその部分を埋めて、マーケティングを埋めてくれる人を探せば、チームは2人ですみます。

必要以上に人を増やすことや、要素をスキルとして持っていない人を入れてしまうことは避けたいところです。特に大企業を経験してきた人に多い傾向はすぐに人を増やそうとして、事務処理だけをするスタッフをチームが小さいのに入れてしまいますが、スタートアップは小さなチームで素早く振る舞う、贅肉のない状態でいることが大前提ですので、それを阻害する要素は不要です。

アンバランス

よくある失敗ケースとしては、エンジニアが同じようなスキルセットをもったエンジニアを誘って、エンジニアだけでチームを構成してしまう場合です。

3つのスキル範囲 アンバランス

この場合、開発部分に偏りすき間が多くなり、製品・サービスは作ったけど、ターゲットが不明確で結局誰も使ってくれなかった。という結果になりがちです。

これを解消しようとすると、エンジニアであってもデザインやマーケティングができる人が開発から離れてその他の部分を埋める必要があります。

スキル不足

もう一つ大事なことは、三角形を埋める範囲としての個々人のスキルレベルです。メンバそれぞれバランス良く配置できたけれども、埋める範囲が小さければ結果的にすき間が大きくなってしまいます。

3つのスキル範囲 スキル不足

日本ではあまりスキルレベルについてはクローズアップされませんが、やはりスキルが高いチーム(三角形の隙間が少ない)のほうがスキルの低い(三角形の隙間が大きいチームより成功の可能性は高く思われ、投資価値が高いことは当然のこととして認識して良いと思います。

スティーブ・ジョブスの「Aクラスの人材だけでAクラスのチームをつくること」や Evernote CEO フィル氏の「自分より優秀な人材だけを雇う」という言葉は三角形を埋める範囲が大きい、スキルの高い人が必要であることを裏付けています。

チーム作りの考え方 まとめ

まとめると、メンバーとしては自分が埋める範囲がある程度作れることを前提として、その範囲以外を埋めるスキルの高い人になります。

考えてみれば2~3名程度でサービスを作り出し成長させる作業は並大抵の仕事ではありません。

起業を始めることに対してのハードルはないに等しく、1円から会社も登記できますし、インターネットとPCがあれば製品・サービスは作り出せます。 ただ、スタートアップに求められる、熱心に使ってくれるユーザに対してサービスを生み出し、継続的なしかも急激な成長を成し遂げることができるか。という大きな課題は、ある一定レベル以上のパフォーマンスが必要で、それでも結果的に失敗してしまうかもしれない不確実なレベルの高い世界です。

その世界でどれだけ自分自身がまたチーム全体が良いパフォーマンスをしていけるか、スタートアップにとってとても重要なテーマだと思います。

あなたは三角形のどの位置でどれくらいの範囲をカバーできていますか。一度三角形を見ながら整理して、じっくり考てみてはいかがでしょう。

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