つれづれスタートアップ#3 ベンチャーナウ連載


今回もベンチャーナウに連載していた第3弾の文章を紹介します。

全体として述べている内容は今でも通じる普遍的な内容になっていると思います。 はじめてのスタートアップ創業者を目指している方に参考になればです。

2013年時点での私の考え方のとして読んでいただければ。


スタートアップのエコシステムを構成する4つの要素

日本ではスタートアップ関連のイベントや記事をよく見かけるようになっています。それにともなってスタートアップに関係する方々もここ最近増えているようにも思えます。

創業者からすると自分のやっていることを一人でも多くの人に紹介しようと、一生懸命話し込んだりしているのではないでしょうか。

ただ、やみくもに誰でもということで良いのでしょうか。今回はスタートアップという世界を構成する要素について整理し、創業者にとって重要な要素が何であるかを考えたいと思います。

エコシステムを構成する4つの要素

スタートアップの世界をよくエコシステムなどと呼んだりしますが、循環する生態系のような世界は確かに一般的なビジネス手法としては異なっていると思います。

この特殊なエコシステムを成り立たせている要素とその特徴ををあげてみます。

創業者

  • 会社価値を高めることが命題
  • お金を欲しがる

アドバイザー・エンジェル

  • 創業者を成長させることが命題
  • 創業者を支援したがる

投資家

  • 投資してお金を増やすことが命題
  • お金をスタートアップに投資したがる

買収先

  • 魅力的なスタートアップを取り込むのが命題
  • 魅力的なスタートアップにコンタクトしたがる

創業者

起業しようとしている方であればあなた自身です。実際にバッターボックスに立ってバットを振ってホームランを狙う唯一のプレイヤーといえます。

アドバイザー・エンジェル

経験の乏しい創業者にとってはシード期に欠かせない要素で、経験や足りないスキルを補う指導をしてくれます。鋭いスイングをするためのトレーニング方法や配球の癖などを教えてくれます。自分の経験を元にノウハウを提供してプレイヤーを育ててくれる、テクニカルコーチのような存在です。

投資家

シード期(アマチュア時代)には登場しませんが、アドバイザー・エンジェルに比べ、より大きな資金を投じてプレイする環境を整えてくれます。プレイヤーの給料、バットなどの道具、チームメイトなどを集めることのできる資金を提供する球団社長のような存在でしょうか。

買収先

エグジットを成立させてくれる存在なので、ホームラン自体を指せばよいでしょうか。

必須の要素 = エコシステム

これら4つの要素は1つでも欠かすことが出来ない重要なものであり、お互い依存し合っています。お互いギブアンドテイクが成立する関係とも言えます。

創業者がいなければ、そもそもゲームが成り立ちません。アドバイザー・エンジェルがいなければ、創業者が素人の状態でバッターボックスでバットを振ることになり、ホームランが出る確率はほとんどなくなります。投資家がいなければ、創業者がプレイに集中しづらくなります。自分のバット代を稼ぐためにアルバイトしなければならないので、バッターボックスに立つ回数が減ります。買収先がいなければ、そもそもホームランになりません。

創業者は唯一のプレイヤーなのでもっとも重要ではあるのですが、それを支える存在もホームランを出す確率を大きく高めてくれる大事な存在といえます。

4つの要素に集中する

では、それ以外の要素はないのでしょうか。

大きめなスタートアップのピッチバトルの会場には様々な人が集まり、4つのどこにも属していない人たちもいます。 懇親会では熱心に創業者へコンタクトしてきたりします。私が実際お会いした方々で言うと個人事業主、経営コンサルタント、弁護士、会計士、大企業の新規事業担当者が多かったです。

この人達は言わばスタンドでプレイの様子を見ている人たちです。重要なことですが、実際プレイに関与することは少ないです。 彼らにとって創業者は物珍しく、話をしてみたいという興味や、スタートアップを将来的な顧客の対象としてみているケースが多いようです。

実際、名刺交換をした翌日にメルマガを送りつけてくるような方もいましたし、シード期のスタートアップにおいてはお互いのギブアンドテイクが成り立ちにくい関係にあります。

弁護士や会計士も?と思われるかもしれませんが、アドバイザーからスタートアップを相手に仕事をされている方を紹介していただくのがベストです。 実際私はスタートアップの事情を理解していない会計士にお願いしてしまい、単なる事務処理に工数と時間をかけてしまった苦い経験があります。

重要なのは4つの要素の存在がどこにあるかが見えていることです。特にシード期はアドバイザー・エンジェルが自分たちを気に入ってくれるかどうか、またそれに値するサービになっているかどうかが次に進むための大事なステップです。

創業者は自分のアイデアが絶対うまくいくと思い込んでしまう傾向があります。 ユーザからのフィードバックもありますが、サービス成長の方向性や大きな視点での捉え方を経験者であるアドバイザー・エンジェルから得られれば、盲目的にならず大きな視点でサービスを見つめ直すことができます。 最初のアイデアにとどまることなく受け入れられるために修正を繰り返し、サービスをブラッシュアップすることに注力すべきだと思います。

そういう意味で、創業者が意識しておいたほうが良いと思うことは、はじめて会う方が4つの要素のどこに位置しているか、またはどこにも属していないかを瞬間的に判断することです。

4つの要素以外とのコミュニケーションを極力控えて、4つの要素に注力するだけでもだいぶ無駄が減らせてシンプルな身の振りができると思います。 判断が出来れば対象によって話す内容も変えることができますし、実際伝える情報を適当なものにできないと、その後の関係性を維持することは難しいでしょう。

各要素の依存関係や特徴を理解しておけば、成長にとって本当に必要な要素を正しいタイミングで正しく得やすくなると思っています。

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