今更ながらに読んだ。タイトルとしては知っていた “五体不満足”
おとくん
障害は不便です。しかし、不幸ではありません
この強烈なメッセージは今までの障害者に対する認識を変えた。今まで持っていた固定観念を変わるような大きなものだった。
障害者というとかわいそう、助けてあげなくっちゃ。にすぐ結びついてしまう。 そうなりやすい原因は、隔離の環境からくる差別の視線なのだろう。
これが隔離されることなく一緒に過ごすうちに普通になる。特別な見方は必要ない。
そんなことに気付かされた内容だった。
当時大学生として未来の可能性に満ち溢れ、理想と期待に胸膨らませている一人の青年。 活発で前向きで後ろめたさを感じずにどんどん進んでいく。これが “おとくん” だった。
まだ社会で揉まれていない、理想的であまり見えていないがための概念的な希望の羅列での終わり方。
完全版である意味
この本はこれで終わったとおもいきや、そこからが新たな物語になっていた。
完全版で追記された部分は本が出版され大ヒットした以降、おとくんに起きたことがらが赤裸々に書かれている。 希望と可能性に満ち溢れていた文章が一転して、現実的な厳しさが表現されている。
マスコミに担がれ、メディアに追い回され、露出が増えたことによる一般人からのうがった視点にさらされる。
ベストセラーになったことが、こんなにも自分の人生に影響を及ぼすとは想像できなかっただろう。
有名になることのリスク を考えたりする。何かを知ってもらうにはマスメディアに露出するのが効果は出やすい。だがリスクとして、メディア側の情報の湾曲、必要以上の加熱、手のひらを返した時のネガティブイメージがある。
重要なのは、 伝えたい人たちに正しく伝えることができるのかどうか。 かと思っている。
そういう意味では、非常に不幸なものを乙武さんは背負ってしまったのではないかと心配する。
本が出版されてから10年以上経過して、現在、乙武さんはNHKスポーツニュースのマンスリーゲストなどをやっている。
完全版ではテレビに出ることは避けていたようだが、今再びテレビに出ている。ここに至るまでもいろいろ葛藤と模索があっただろう。
障害者に対する新しい視点と1人のスポットライトが当たり過ぎた人間が生きていくための葛藤。2つの物語をこの完全版から見た。