男親にとって娘というのは異性であり、手荒に扱ってもいけないような、気恥ずかしいような感覚をいつも持っている。
自分も一人娘の親としてそんな感覚を常に持っていたし、娘が中学生になってからさらに気恥ずかしさは強まった気がする。
この小説は、父と娘のはかない物語。
自分も1人娘の父親として共感するところが多々あって、自分と娘だった場合のシーンが頭の中で浮かんだ。
親として、親らしいこと、親らしい発言を娘に言わなければという意識がとても強くなってしまう。ついつい何か問い詰めたり、しかろうとしてしまおうかと思うところがある。
しかし父親といえどもそんな振る舞いは必要ないかもしれないし、本当はそんなに自信を持って振る舞っているわけではない。そんな父親の自信のなさ、異性の子どもへの接し方のもどかしさが散りばめられており、とてもよくわかる。
結局、主人公である父親のハルさんは花嫁の父親として娘を送り出すわけだが、自分もいつかはその立場になるのかもしれない。ハルさんの気持ちの動揺や心配がとてもわかるので、未来の自分の予定を垣間見ているような気がした。
文章自体はとても読みやすく、良く言えば読みやすい、悪く言えば普通の文章の連続。
文章の魅力で着込むというよりかは日常的によくある様子をトーンを変えることなく、ちょっとだけ不思議な世界を見せてくれるような本です。