日本時間6/25 05:00から行われた 2014 ワールドカップ Cグループ 日本xコロンビアの試合分析をしてみたいと思う。
この試合は自宅でテレビ中継の録画を見て観戦。
では、思ったことを書いていく。
攻撃的にできたと言われているが
予選3試合の中で最も攻撃的に行けたと言われていたが、自分が見た感じはそうではなかった。
確かにシュートが多いし、ボールは以前の2試合に比べて保持できていたと思う。
しかし、得点に直結するようなシーンはほとんど作れていなかった。ペナルティーエリア外からのシュートは可能性を感じるようなものはなく、相手を崩したシーンもほとんどなかった。
何より気になったのは、この試合もスピーディーなパス回しと連動が全くなかったこと。今までの2試合で体が重そうでパスが遅かったが、この試合でも改善されている様子はなかった。
そういう意味では、ボールは割りと保持できたが攻めきれていなかった。という印象だった。
「自分たちのサッカー」の攻め手
日本の良い時のサッカーと言うか、個人的に思う日本の「自分たちのサッカー」は選手の距離感が近くてショートパスでつないで、複数が絡みながらよどみなくゴールに迫っていくイメージなのだが、ワールドカップの攻め方を見るとショートパスで連携するシーンは捨ててしまっているように見える。ワンタッチやワンツーのシーンはほとんどなかった。
この日もギリシャ戦で見せたような浮き球を使った裏へのパスが多めで、うまく受けれず相手ボールになるシーンが多かった。裏は出し手と受け手のタイミングが合わないといけないから、連携が表現できていない日本にとっては難しいプレーをわざわざ選択していた。
唯一相手にとって危険な存在だと思われたのは大久保だろう。ワントップで自由に動きながらボールを受けるとゴールを狙うプレーを必ずしていた。逆に言えば驚異な存在になっていたのは1人しかいなかったので、コロンビアはゴール前をしっかり固めておけばあまり怖くなかったと思う。
代表に呼ばれずにいて最もチームとしての連携が取りにくい大久保が最も相手に脅威を与える存在として重宝されていたのは、何とも皮肉な状況だと思った。
明らかにカウンター狙いだったコロンビア
最終的にスコアは4点取られたが、全てカウンターによるもの。コロンビアは日本の特徴を知っていたし、その対策として奪ってからの速攻で得点を取る戦術をしっかり実践していた。
前半終了直前の岡崎の1点で追いついて、雰囲気としてはまだまだこれからだ、となっていたが、個人的には日本の攻めの悪さやショートパス・スプリントができない状況から「自分たちのサッカー」が表現できていないまずい状況であると思っていた。
そして、後半10分に2点目を取られ、状況が悪くなり後半37分に3点目が入り、これで気持ちが切れてしまった。最後の4点目はおまけみたいなもの。 コロンビア10番ハメス・ロドリゲスは確かに素晴らしいセンスを持っていて違いをもたらしたが、10番に打開されてしまったというより日本の悪い状況をしっかり得点に結びつけた。という印象だった。
カウンターへの対策はあったのだろうか
コロンビアのカウンターで4点も奪われて結果的には勝つどころの話ではなく、完敗だった。
明らかに選手のコンディションは良くなかったし、攻めの部分でも今までと違うことをやろうとしたりということはあったが、そもそも戦術的な問題に対して回答を用意せずに試合に望んでしまっていないかということを考える。
「ボールを保持して主導権を握る」というスタイルを公言してきたのだから、相手は当然それに対して策を打つ。コロンビアが実践したように、プレッシングするというよりゴール前をしっかり人を配置して、奪ったらカウンターで得点を狙う。 本田が攻撃の起点であることも明確なので、マンツーマン気味に本田に付いてボールが入ったら激しく奪うことをすれば日本の攻撃のリズムは崩れる。実際コロンビアは本田にボールが入る手前から予測してボールを奪って2点目を決めた。
そういうことをしてくる相手に対して日本は何ができたのだろうか。「自分たちのサッカー」ができたらカウンターを食らうことは全くないのだろうか。そんなにワールドカップは甘くはないと思うのだが、試合を見る限り相手のカウンターに対しては無策で見事に相手の戦術にはまった。
惨敗の原因を考えてみる
本田の劣化
あまり指摘している人がいないようだが、個人的には最近の本田は全然良くなくて全盛期に比べて明らかに劣っている。
本田の特徴はフィジカルを活かしてボールを保持できる。連携もできつつシュートも決めることができることだと思っているが、ミラン加入時からそれらの特徴が出せなくなっていると思っている。
足も遅くなったし、フィジカルも弱くなったのか体を当てずにボールをキープしようとする。スピードがないので抜けないし、どうしても浮き球で裏を狙うようになる。 あのレベルではミランでスタメンをキープするのは難しいだろうなぁと正直思う。
今回のワールドカップにおける日本代表において本田はスペシャルワンだったわけで、決して交代することがない存在だった。劣化してしまった状態で中心に置かれてその結果が今回の惨敗だったわけで、そういう過程を加味した結果、新しくスタートする日本代表に呼ばれるのだろうか。
個人的には呼ばれる可能性は低いのではと思っている。劣化の原因はもちろん分からないがまずは元に戻って欲しいと思う。
ケガ明けの選手たちの起用
ザックのポリシーとして連携を重要視することから、決まったメンバでの共通理解を保持するためにるためにスタメンはほぼ固定化される。
ワールドカップ直前で変更があったのはワントップとボランチの1名。山口螢は固定化されたメンバ入りしたと捉えることができるので、ワントップ以外は決まっている。
その決まったメンバの内ワールドカップ本番までにケガをして試合をしていない選手が3名いた。内田、吉田、長谷部。なんとか開幕直前に間に合わせたが、ケガ明けで試合をしてこなかった選手のパフォーマンスを保証することはできない厳しい状況だった。
その保証できない選手たちをスタメンで使ったわけだが、果たしてその判断が良かったのかどうかは疑問が残る。
弱点への無回答
日本は「自分たちのサッカー」をすると公言されていたので、相手はとても対策しやすかっただろう。
問題はディフェンス。特に前掛かりになった時のカウンター対策。戻りきれずに失点する。
あと、細かいところだと日本のワントップは貪欲にゴールを狙うタイプではなく、2列目を活かす存在なので怖さがない。基本的に2列目のマークをしっかりすれば良いと割り切れる。
代表から離れて長い大久保が3試合とも出場したのは貪欲さに期待したところが大きいだろう。逆にワールドカップ当日にそこに期待してしまうほどチームとしてのパフォーマンスは良くなかったとも言える。
ザック
悔しさの心中を察する
ザックからすれば強豪国との試合で手応えを掴んで、「自分たちのサッカー」をすれば点は取れると思ったのだろう。
しかし、始まってみると思ったよりも選手が走れなかったし、ショートパスでつなぐこともなくミスが多く出てしまった。もっと出来るはずだと思いながら3試合を過ごしただろう。そういう意味ではザックの思い描いたとおりにならなかった悔しさは理解できる。
はじめてのワールドカップ
しかし、これがワールドカップであり、クラブ同士のリーグ戦ではない、国同士の短期決戦の場だと思う。華麗なプレーは少なくシンプルに激しくプレーする。相手の良い所を潰し、それはチームのスタイルをも変えて、勝ち点を取りに行く。
ザックにとってワールドカップというと特別な舞台をイメージするには今までのクラブチームでの豊富な経験がいろいろな想定を誤らせたのかもしれない。
ワールドカップの厳しさを終わってみてはじめて実感しているだろう。
最後に見せた香川の可能性
香川にとってはじめてのワールドカップは不完全燃焼だったと思う。らしいプレーというのはほとんどできず、左サイドでボールを受けて中央に切り返すお決まりのパターンを繰り返すだけになってしまったかもしれない。
しかし、コロンビア戦の後半3点目を奪われた後で見せた数分間のプレーは、やっぱり世界で通じる可能性を持っていることを示したと思えた。
仕掛けて相手に奪われそうになってもつれながら倒れる。ボールはゴールラインを割ってコーナーキックを得る。そんなプレーが何シーンかあった。 決して崩せたわけでもシュートを打ったわけでもないが、球際の厳しさ、ちょっとした差が非常に重要になる舞台で負けていなかったのは大きい。
そんなプレーを香川が最後に見せれたことは、新しい代表に続いて行く道標になったような気がしている。
そしてこれから
日本のワールドカップは終わった。
やっぱりアジアはまだまだひよっこだな。とヨーロッパの強豪国のサッカー関係者は思っているだろう。
世界はまだまだ強いし、したたかだった。真正面に行ってこてんぱんにされた日本だったが、この失敗を活かさない手はないだろう。失敗の経験そこが次の成功の可能性を高めてくれる。
新しい日本代表は何を目指すのか。どんな戦術でフォーメーションはなんだろう。とても興味深いし個人的にも考えてみたい。
世代交代も進むだろう。今回出場のなかった選手が次のワールドカップの本番の舞台に立つかもしれない。
ブラジルでの決勝戦が終わればすぐに日本代表は始動するだろう。もうすぐ新しい日本代表が始まることにワクワクして待ちたいと思う。