Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール
この本について
世界で最も評価されているシードアクセラレーターであるYコンビネータの内部の状況を明らかにした本。
具体的には2011年4月から3ヶ月間プログラム夏学期の最終選考、夏学期、デモデー後のいくつかの創業者の様子まで、筆者がYCに入り実際のやりとりを取材した内容になっている。
3年前の情報なのでそこまで古くなく、Yコンビネーターのスタンスからもそこまで大きな変更が起きていないだろうから、Yコンビネータの直近の姿と思って良い。
スタートアップを志す人達にとって、Yコンビネーターで実際どんなやりとりがされているのか、どんなアドバイスが得られるのか、興味を抱くと思う。
この本でそのアドバイスの内容、創業者たちの志向・実行が具体的に分る。この本以外では得られない情報でとても貴重なことだろう。
シリコンバレーの今と変わらないYコンビネータのスタンス
もともとはシリコンバレーではない場所でYコンビネータはスタートしていて、いくつかの試みをした後に拠点をシリコンバレーにした経緯がある。
世界中の優秀な人材が集まるシリコンバレーのうごめく中に、一貫して3ヶ月プログラムを積み重ねるYコンビネーターの存在はたくましく映るのだろう。
Yコンビネーターとしてのスタンスは一貫している。投資家、創業者に対してYコンビネーターの考え方に基づいた関係性を保つ。投資家にはシードにおける成功率の低さを理解してもらいつつもYコンビネーターとしてのブランディングを認識してもう。選ばれた創業者たちには過度な干渉はせず最終的には創業者自身が判断しそれが招く結果を受け入れる。感情的なものはなく一喜一憂しない。
自身がエンジニアでもありスタートアップで売却まで経験したポール・グレアムの思想によるところが大きい。
Yコンビネーターであっても得られないこと
この本を手にする時の期待として、世界で最も有名なシードアクセラレーターであるYコンビネーターなのだから、より大きな成長を手にできるサポートが得られると思いがちで、自分もそう思うところはあった。
確かにYコンビネーターのパートナーたちは実際に起業をし成功を収めた面々も含まれ、豊かな経験を元にしたとても有益なアドバイスがもらえる。多分日本ではここまでの質は出ないと思える部分。それこそがYコンにエントリーする大きなメリットと確かに言える。
でも、やっぱり本書を読み終えて認識するのが、スタートアップというのは正解のない実に不確実な世界だということ。
どのアドバイスもなるほどと思うけど、それが確実な成長を保証しないしそれを保証できない中でのアドバイスとなっている。どちらかと言うと創業者への模索を促す、頭の使い方を間違えないようにしている。本当にそれが成長するかはYコンのアドバイザーでも分からない。世界中の誰でもやっぱりわからないのだということを強く再認識した。
不確実な世界だから成功の度合いが大きい、誰もわからないからリスクは大きいがチャレンジする価値も大きい。
Yコンビネーターであっても、成功の方程式はないのだということを強く思った。
創業者の悩みは不変的でも気は休まる
厳しい選考にをくぐり抜けたYコンビネーターのプログラムを受ける創業者たちでも根本的な苦悩は変わらない。
このサービスは誰が使うのか。より成長するために何をすればいいのか。そもそもこのサービスは使ってくれるものになっているのか。
最終的には創業者で判断していかなくてはいけない。Yコンビネーターはその悩みを相談できる優秀はアドバイザーとすぐにチャレンジが終わらないようにするための少額の資金があるから根本的解決にはならないけど気休めにはなる。
はじめてのスタートアップを志してインキュベーターファンドやシードアクセラレーターの支援を受けたいと思っている人は、それらのドアをノックする前に読んでおくといいかも。
どんなサポートを得られるのか、創業者が行わなければいけない部分は何なのかを具体的にイメージすることができると思う。
よくある「ここまでしかやってくれない」「やってくれると思ったのに」みたいな境界線の認識違いみたいなことは事前に解消できると思う。
スタートアップというとてもリスクの高い世界に飛び込む前の段階の人達に特にオススメしたい。
良かった部分の抜粋
Loc 1769
アイデアを生み出すための3カ条だ。1. 創業者自身が使いたいサービスであること 2. 創業者以外がつくり上げるのが難しいサービスであること 3. 巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと
Loc 1871
あったら便利だろうと思えるようなサービスの典型だな。しかし <それがなくては絶対に困る> というようなニーズを満たすようなソリューションではないところが問題だ。それがなくては絶対に困る>
Loc 2920
ブラブラしないこと。成功するスタートアップはミートアップに行かない、アドバイザーたちと話すために走り回らない、ひたすらコードを書き、顧客と話す
Loc 5416
重要なのは次の3点です。コストを安上がりにすること。次にニッチを探すこと。でなければ、これが3番目ですが、既存のライバルより10倍優れたプロダクトを開発すること。ドロップボックスは3番目の例です。しかしたいていのスタートアップは1番目と2番目の道を行くしかなかったのです。