日経の広告欄に載っていて、ホリエモンこと堀江さんが収監されてからのことが知りたくって買ってみた。
一度道を絶たれてしまった人がまた再出発する時の心境とか知りたかったし、何しろ堀江さんがまた新しいことを始めることに対する期待もあった。
ライブドアショックはもうすでにかなり昔の出来事のように思える。でも、記憶の中でかなり鮮明に覚えている。
六本木ヒルズのライブドアに強制捜査が入ってニュースもそれで持ちきりだったその日の夜中はメンテナンス作業を行う予定だった。当時データセンターのネットワークエンジニアだった僕は最大顧客のポータルサイト会社と共同メンテナンスを行うためにデータセンターに入館して、お客さんのエンジニアの到着を待っていた。
エンジニアさんと会って、当時その会社もヒルズにいたので「ヒルズすごい状態じゃなかったですか?」と聞いたら、「今はそうでもないですけど、報道陣がビル下にすごいですよ。」なんて答えてくれた。
当時は個人投資の熱が高くてネット証券会社が手数料を低く争っていて、僕も試しにライブドアとヤフーの株を持っていた。ライブドアは分割しまくって1株あたりがすごく安く個人投資家でも買えるレベルだった。
それが強制捜査後に上場廃止決定、そこから株価が毎日ストップ安でどんどん下がる、紙くずになる前に何とか売ったけど、あっという間の出来事だったし、なんとも物悲しい体験だった。
そこから4年くらい前だろうか、堀江さんが逮捕された後に強制捜査と世間への対応を含めて社長として表に立たれた平松さんに当時の様子を聞く機会があった。本当に笑えないストイックなお話だったのを覚えている。
ライブドアショックをきっかけにして確実に日本のITの力は弱ってしまった。IT関連上場もアベノミクス登場まで低調だった。インターネットの影響力が日本限定でとても弱くなってしまったことが何より悲しいと思う。
あれから7年が過ぎた。時代は変わってスマホが出てきてITはまた新しい段階に入った。
その時に日本のネットを牽引した堀江さんがまた再出発する。なにか感慨深いものを感じつつ読み進めた。
この本は、堀江貴文という一人の人間を知ることができる。
今まで書いてこなかったらしいが両親のことや学生時代のことについても書かれている。
単に個人の歴史を振り返ることではなくて、オン・ザ・エッヂからライブドアを通じて急成長させた会社で働いてきた経営者だからこそ得られた教訓を分かりやすく伝えてくれている。
やはり世間やニュースに映るイメージとは異なり、シャイであったり単純にエンジニアとして技術を愛して信頼していたりしていることがわかる。
「小さな成功体験を積み重ねる」「掛け算ではなく足し算」などの言葉は世間のイメージからすると意外に思えるだろうが、これが堀江さんが体験を通じて語る教訓。
誰しも急成長する会社のトップをやれることではないので、堀江さん本人の視点を知ることは貴重なのだと思う。
今、自分もリスクを取って実現したいこと、作りたいものに向かって進んでいるが、やっぱりこの状態は金銭的にも精神的にも不安定だし、本当に正しい方へ進めているのか不安にもなる。
そんな時に読む堀江さんの活きた教訓の数々は共感する点が多く、経験したものだけが述べることができる言葉は気付きと前向きなエネルギーを与えてくれた。とても助かった。
再出発した堀江さんを純粋に応援したい。とても人間的で未来を開こうとする勇気を与えてくれる本だった。