社長失格 を書かれた板倉雄一郎さんが14年ぶりに起業し復活された。
「社長復活」のタイトルだけで Kindle で即買ってしまった。単純に復活出来たことを嬉しく思った。
大きな時代の波に飲まれて自己破産までされた方が、どうやって復活まで辿りつけたのか、心境の変化はどんな過程だったのか、それが知りたくって一気に読んだ。
出版されたのが2013年2月なので、起業の仕方、ビジネスモデルなど最近の状況の中で発想されているので、時代のギャップを意識することなくダイレクトに参考にできる。
日本ではまだまだ失敗した人に対するネガティブなイメージが強く、大きな損失を出しただけ「悪」のように思われてしまうところがあると思う。
本来は大きな失敗は最高の教科書で、多くの失敗の原因を反例として活かせば、次回失敗する確率はとても少なくなる。少なくとも平均値以上には確実になる。ということは、投資価値が高まるのでお金が集めやすい。とロジック的にはつながるのだけど、あまりそこを理解している人が少ない気がする。
それだけに、世間からのネガティブイメージを振り払いながら再チャレンジしたのは、相当な紆余曲折の末があったのだろうと思っていた。
本書を読むに、予想よりも心理的負担は大きかったようで、鬱になったり自分を抑えこんだりして、3.11を境目に発想が変わり再起業を決意した。ここにいたるまでに14年もかかってしまった、この事実が事の深さと時代の風当たりの強さを表している。
再起業に対して、どういう考え方を持ってチャレンジしているか。というのはとても参考になると思う。
失敗から学んだこと、時代の変化に対応して「持たない経営」の実践の仕方、アップル・フェイスブック・Google・シリコンバレーを視野に入れたグローバル戦略などなど、これから起業をしようと思っている人や実際始めた人にとっては示された実例が大いに参考になると思う。
もし「ビジネスプランをよこせ!」という投資家や銀行がいたら、どんなに金が必要でも、彼らのお金に手をつけてはならない。ビジネスプラン(数字)を求める投資家に、ろくな奴はいない。
あんなモノ、作るだけ時間の無駄なのだ。
だから、何よりも大事なのはビジネスモデル(収益構造)だ。どんな経済環境になったときに、どんな影響が収益に及ぶのかを検証する。
もっとも美しいビジネスモデルは、ダウンサイド限定&アップサイド(理論的に)無限大のモデル。何がどうなってもダウンサイドが限定されていて、アップサイドが理論的に無限大であるモデルをつくれば大丈夫だ。そうすれば、もしぼくの予想が外れ、事業が成長しなくても会社が潰れることはまずない。それが会社を一度潰して、塗炭の苦しみを味わったぼくが達した結論だ。
なかなか明快に言える人は日本の中で少ないと思う。失敗したからこそ、実践してきたからこそ分かること、言えることが詰まっている。
個人的には最終部分で述べられていることが結構自分と重なって、ビジネス面というより、自分とうまく付き合うためのセルフマネジメント術を意外なところで得られた気がして嬉しかった。
他人に対する義務があると、ぼくは、それが解消されるまでずっと気になってしまうタチだ。約束の時間まで本当はまだ1時間もあるのに、その1時間がほとんど無駄になってしまう。またぼくは何かをはじめるとものすごく集中するので、途中で終えるのがイヤなのだ。
だから今、ぼくは人と会う以外の仕事の予定をほとんど入れない。「今日の予定はなし」だから、毎朝起きてから「何をしようかな」と考える。それがぼくには合っている。
サービスづくりにチャレンジしている自分にとって大きな勇気と重要な考え方を示してくれた本になった。
新しめの本で起業に対して勇気づけてくれる本が少なかったので、とても嬉しい。