DeNA創業者 南場智子さんの DeNA創業の歴史と発展過程を振り返った本。会社が成長する中でその時々のストーリーが紹介されている。
Kindle 版も出たことで気軽に買って読み始めた。
南場さんとか気軽に呼んでいるが面識はなくて、初台のクライアントに通っていた時に旧DeNAオフィス前ビル下でチラッと見かけたくらいなもので、ブログやメディアを通じの情報しかしらない。
でも何となくだけど、社長時代も含め南場さんの言葉って飾らないで自然体・素直な印象が一貫していてとても良いし、そこが良い味を出していて個性的だなと思っていた。
この本も自然体で素直な筆者の持ち味が出ていて、テンポよく時にくすっとしながら楽しく読み進められた。
論理的な深さや追求はないが、色々なドタバタを経験しながら3名で始めた会社は今や東証一部上場の2000人規模の会社に成長した。その事実をよりリアルに知ることができる。
そういえば、DeNAはビッダーズローンチ、モバゲー大当たり、ngmoco 買収、横浜ベイスターズ買収、公取立入検査などなど数々の記憶に残る出来事を経験してきていたなぁ。としみじみする。
そのドタバタの歴史から、大企業からの大きな割合の出資リスク、アジャイル的な開発手法、モバイルのユースケースの特徴などを学んでいっている。今でこそ認識されていることだけど、当時はそんな事例はなかったので、まさに時代の先端を走って来たということだろう。自ら経験して学習した事柄なので、手間はかかっただろうが本から学ぶより血肉化した強さが出る。
現代にあてはめるとマッチしないと思われる点としては、大企業からのいきなり1億円の出資の部分。これは、南場さんがコンサル時代のクライアントだった大企業役員へのパスを活用しやすく、当時はスタートアップの資本政策セオリーのような情報は全くなかったのでできた。
現代はスタートに必要な資金はとても下がっているし、資金比率を抑えながらステージに適した金額レンジがあるので、いきなり真似しようとしてもまずうまくいかないだろう。まず大企業役員へのパスがあるかどうかが重要だけど。
あと面白かったのは、起業家それもスタートアップの創業者になろうとした時に、大手コンサルティング会社で勤めた経験というのは、創業者に適さない知識や経験を得てしまうので「捨てる」ことが大変だったと述べているところ。
個人的にもそれは思うところで、「(最終的な責任は負わずに)アドバイスする」と「(不確実な状況でも)決定し実行する」は真逆な特性になってしまっていて、コンサルで頑張れば頑張るだけ創業者になりにくくなっていくと思っている。
そういう意味では、南場さんはたくさんの捨てることをしてきて創業者らしくなっていった。捨てたことで自分らしさが前面に出て、良い個性になっていると思えた。
成功のストーリーは華やかでキラキラしているように見えるが、内側では人間味のあふれる未熟な人間が演じるドタバタ劇が数多くあること、人間はそんなに華麗に振る舞うことができないことを教えてくれる。