最近は意図的にマーケティング関連の本を読むようにしている。
自分の本業の分野ではなかった上に、スタートアップをやってみて得られた失敗の一つが「マーケティング・プロモーションの軽視」だったから。
どうしてもエンジニアは「良い製品を作れば使ってくれる」と思いがちだし、だからこそ自分自身が世の中を牽引できる感覚を持つ。製品やサービスがその市場で少ない時は確かに売れるのだけど、現代はモノにあふれているし簡単にサービスを出すことができるので、単に作っただけでは埋もれてしまう。
ワーストケースは「誰も使ってくれないサービスを作ってしまった」だが、使ってくれるユーザを明確に定義して刺さるサービスを作れたとしても、そのユーザにサービスの情報が届かない限り使ってくれない。
情報を届けるためにどうすればいいか、そもそもサービスをどう位置づければいいのか、ここら辺をちゃんと考えてサービスづくりをして行きたいと思っている。
この本は、RUNNING LEAN で薦められていて、サービスの独自価値を定義する際に読むと良いよと言われていた。
日本での初版は1987年で近年読むことが難しかったが、2008年に新版として発行しなおしている。
時代背景としてはインターネットもスマホもない時代なので出てくる会社は自動車、化粧品など昔からの大企業になるが、現在も有名な会社ばかりなのと、述べられていることは現代にも通じるので時代のギャップは感じないだろう。
基本的には大量にあふれる製品・サービスがある中で、自分の製品・サービスを売り込もうとする時、顧客の頭の中にポジショニングさせるしかない。
そのための考え方、具体的手法、数多くの事例を説明している。
印象的だったのはフォルクスワーゲンのビートルの広告で、車が大きいサイズのものが流行っていた時期に「シンク・スモール」と言って、真逆ポジションを全面に出して受け入れられたこと。これはアップルの有名な広告「シンク・ディファレント」の発想の元になる広告だったのかもしれないと思った。
単にマーケティングにおけるポジショニング論の概念を述べているのではなくて、具体的にいろいろな方面について述べているので、具体的にイメージできて自分が実行しやすいように思える。
例えば、メディアの活用の仕方、失敗を恐れずやってみる、広告会社のノウハウとはのようなことが書かれている。一つ一つがサービスづくりの時に実践できそうなことばかりだ。マーケティングの範囲を超えてビジネス面や起業精神まで語られているように思う。
本の最終部分には丁寧に戦略開始前の「6つの自問」と、まとめとしてポジショニングで勝利する12の決め手を書いてある。自分のサービをあてはめてチェックリストのような感じで使える。
自分で実際やってみた。今進めようとしているサービスに対して6つの自問に答える形で整理できた。そいうしたら、やはりライバルの定義があやふやだったことと、ライバルの中で自分はどのポジションに位置したいのかが不明確だったことが分かった。ライバルのサービスをもう一度見なおしてユーザ視点での強み弱みを整理し、そことかぶらない自分のポジションを明確にしてランディングページに反映した。
小さな会社が競合がいる中でどうサービスを成長させていけるか。という問はスタートアップにとって永遠の課題だが、この本が大きなヒントをくれている気がする。
今まで読んなマーケティング関連の本で最も分かりやすく最も実践的だと思える本だった。