リーンスタートアップを読んでからの流れで、この本に行き着いた。
リーンスタートアップは、プランB + トヨタ生産方式 + アントレプレナーの教科書で構成されていると思って良い。その構成要素の1つがこの本「プランB」になる。リーンスタートアップを行う前提である「最初のアイデアはほとんど間違っている」という考え方をこの本では解説し、次のプランBを見つけるための情報を提供している。
筆者は起業を経験し成功をおさめ、投資家であり大学で起業やベンチャーについて教える教授でもある。今まで多くのビジネスプランを見て、多くの起業の失敗を見て、成功するビジネスプランに見つけるための振る舞いを提供してくれている。視点としては起業家に近いが、投資する立場で成功する起業家を見つけたい、リターンされる可能性を高めたいという思いが強いという状況で読むといいだろう。
自分がスタートアップをやってみていた時に感じていた、よくある起業家の振る舞いが果たして本当に成功に近づいているのか、というちょっとしたもやもやをうまく言い当てている。
困ったことに、思いつきを書き散らす前に、他のビジネスモデルを自分の会社に適応させる方法をきちんと考えた起業家候補生はほとんどいない。ビジネスモデルの経済がそもそもどのように機能するのか、多少なりとも構造的に考えた者は稀だ。投資家に巨万の富を約束するエクセルシートを広げて見せる前に、アイデアを自分で試すような起業家は、もっと少ない。
投資家に説明するためにビジネスプランの資料を作ったが、どうしてあるテンプレートにそってきれいに「仕立てる」ことをしなければならないんだろうと思った。この疑問に対しても良く言い当てている箇所がある。
こうした欠陥にもかかわらず、ほとんどのビジネスプランは痛々しいほど詳細に、なぜプランA – ビジネスプランでそういう呼び方はされていないが – が成功するかを説明している。何ページにもわたり、収支を実に細かく説明してあるので、かなりもっともらしい。だた、新興企業投資家の大部分が言うように「プランAで儲けた金額より、プランBでの儲けのほうがはるかに大きいんだ」
これまでもっと地に足の着いたプランBを見つけるためのロードマップ – 系統だったプロセス – は存在しなかった。本書でまさにそれを指し示そう。
自分と同じように今まで当たり前に思っていたシード期の起業家の振る舞いに対して疑問や矛盾を、この本が解消してくれるかもしれない。それはすでに新しい前提としてリーンスタートアップの考え方に生かされている。
最初の思いついたプランを素晴らしく思われるように「仕立て」、とにかく早く動いて早く成長しようとする前提はなくなったと思って良い。なぜそれではダメだったのか、成功を収めたスタートアップのプランAはどのようにプランBもしくはプランZまで変化していったのか。この本が教えてくれる。
紹介されている事例はグーグルの検索サービスからアドワーズ誕生までの変化、パタゴニア、コストコ、スカイプ、アマゾンなど馴染みの深い企業なので、理解しやすいと思う。
この本を読み終えた時に本書に書かれていない、1つの重要な結論があった気がした。ビジネスプランの内容の善し悪しは意味をなさない。ということは「誰(たくさんのビジネスプランを見てきた投資家やアドバイザーですら)も成功するビジネスプランはわかってない」。ということ。
実際市場と照らして修正する振舞いが前提になっているので、誰も正解を知らないということになる。そうなった場合の、投資家やアドバイザーの役割は今までと異なってくるのだろう。
あとは、シード期の投資を受けるタイミングとチーム規模について。成功するビジネスプランを見つけるまでの時間はまだ可能性がとても低い状態なので、日本だと投資する意味は成り立ちづらい。3000万円でも3名で1年間の猶予しかない、投資側が状況とリスクを十分承知して投資してくれないと成り立ちにくいだろう。チームも不確実な状況で小さく試すことが推奨される中でフルコミットで3名程度にしてしまうとコストをかけ過ぎな気がする。生活費をどうするかという問題は常にあるので、そこを投資で埋めるのか、チームを小さくするのか、仕事をしながら隙間時間でチャレンジするのか。とかいろいろ選択肢が出てくる。今のところこれらの選択肢の中で何が良いかという結論は出ていないし、個々人で決断してやっているのだろう。この点では Running Lean の本で筆者が実際選択し決断した実践内容が紹介されている。リーンスタートアップ系の本で最も実践的な本になる。
実はこういったシード期の細かいけど実は切実で重要な課題は起業家同士や投資家アドバイザー含めあまり交流していないと思う。ベンチャーナウで「つれづれスタートアップ」連載をさせていただいているのも、自分なりの今思う考えを提示して議論や交流を活性化させたいという思いからだったりする。実はもっと議論しやすいように座談会のような場を設けてディスカッションして、オンラインでも展開していくことを考えていたりする。
もし、同じような問題意識を持っているかたはブログへのコメント or @d_sea or FB:fukami まで意見いただければと思います。