保険業界というのは昔から古い営業スタイルがずっと続いている特殊な業界だよなぁと思う。
大手の手法は保険レディたちによる人海戦術で、昼休みにオフィスに足蹴く通い、仲良くなって何とか契約を取り付けようとする。一回話を聞いてみようかと提案の場を設定してもらったら、おばちゃんがついてきて一方的に機関銃のようにそのおばちゃんが話し続けて、場をぶち壊して当然断ったという痛い思い出がある。
CMもまさに同じで保険レディが顧客の職場や自宅で話す様子を流しているから、いまだに同じスタイルなのだろう。日経の1面広告で成績優秀な全国の保険レディを顔写真付きで並べて掲載しているのなんかは、表彰された人は達成感を味わうだろうが、ユーザから見ると会社の単なる自己満足だなと思ったりする。
そんな古い保険業界にネットのみで販売し、安くスムーズにサービス提供しているのがライフネット生命だ。古めかしい文化の保険業界にネットの力で風穴を開けたベンチャーである。副社長の岩瀬氏はネット選挙解禁の陳情時に楽天 三木谷氏の横に座っていたりする。
そんなライフネット生命が実績を上げるためにやってきたマーケティングの具体的内容を紹介している本。著者はライフネット生命マーケティング部長だった方(現在は常務取締役)。スターバックスの日本展開時のマーケティングマネージャーだったキャリアを持つ。
内容は今までライフネット生命のマーケティングの考え方と実際行なってきたマーケティング手法の紹介になっている。
ネットだけで対面販売をしない時にどうやってマーケティングするか。ネット系サービスにも共通する課題だが、ライフネット生命はうまくリアルとネットの手段を使い分けているという印象を受ける。
ネットはブログパーツやソーシャル・マーケティングを行なっているが、それだけでなく「全国どこへでも10名集まれば社長がうかがいます」というリアルな取り組みを行なって、ユーザの共感を作りそのユーザが発信して広げてくれる。
ネットはリーチできる範囲が圧倒的に広いので、リアルな取り組みをやらなかったりそこの影響を薄く見てしまう傾向があるような気がしていたので、この組み合わせはちょっといいなと思った。
あとは「全員マーケティング」は人数の少ないベンチャーにとってはやっぱり必要なことだなと思った。自分が周りの人に勧められないようなサービスを提供してはいけない。という裏返しでもあるし、SNS も含めた個人メディアはすでに存在しているので、色々な個人メディアから発信することはとても重要だと思う。発信するのはマーケティング担当者の仕事と思ってしまっては、すでに狭すぎるということ。
ちょっと画一的に考えそうになるネットサービスのマーケティングについて、ちょっとしたスパイスを与えてくれる本だった。