2012年はクラウド業界にとってどんな感じだったか振り返ると、国内も IaaS が出そろってサーバを買う代わりに IaaS を使うことが常識化した。PaaS は Heroku の一人勝ち状態は変わらないが、他のサービスも含めユーザの認知は深まった。ということろだろう。
さて今年はと考えると、これはもう昨年から登場してきた MBaaS に間違いないと思っている。
Mobile Backend as a Service は簡単に言えば、モバイルに特化したクラウドサービスで、モバイルアプリケーションのバックエンドサーバとして動作する。
アメリカではすでに幾つかのサービスがローンチされていて、2012年末にテック系ブログで比較記事が載っていたり1、MBaaS の各プレイヤーの資金調達規模の比較をしている記事もあり2。(大体 midsized のスタートアップたちはシリーズAラウンドまで行って、$7M程度の資金調達規模)
日本企業でグローバルカンパニーである Kii も2012年10月に MBaaS のローンチを発表した3。
2012年にかけてホットになってきているのが MBaaS で、ユーザへの浸透が本格的に始まるのが2013年だろうと思っている。
MBaaS が流行るとする理由を以下にまとめる。
Smartphone > PCs な時代に入る
これは、モーガンスタンレイが2010年に出した、2012年にスマートフォンがPC台数を超えるとの予想4。まだ実測値でどうだったかのデータは出てないようだが、マーケットはすでに動いている。
これはとても大きな出来事で、ビジネスのメインフィードが変わる。ビジネスを捉える視点(マーケット、ユースケース)が今まで異なることになる。
MBaaS 市場は2012-2017年まで毎年104%ずつ成長して、2017年には$7.7Bまで成長するだろうとする予想もある5。
PC用Webではなく、ネイティブアプリ+スマートフォン用Webがメイントラフィックになる。
市場のフィールドがPCからスマートフォンになり、ネイティブアプリ・関連サービスが主役になる。
スマートフォンアプリが増え、それを支える MBaaS の利用が促進されるのは、この予測 = マーケットの流れと合致する。
サーバの考慮が一切いらなくなるコストメリット
言ってみれば、IaaS はOSまで入ったサーバ貸し、PaaS はWebホスティングサーバであり、モバイルのバックエンドサーバに仕立てるためのセットアップが必要。
何がしかのサービスを提供したくてクラウドを利用しようとすると、どこかの部分でユーザがサーバのセットアップに関わる必要があった。サーバが正しく動いているかどうかはユーザの責任分界点の内側だっったとも言える。
MBaaS はユーザ側がサーバのセットアップに関与することなく、予め用意されている機能を利用するのみの関係になる。とてもシンプルな関係。
すべての機能はAPIベースで利用可能であり、iOS/Android用SDKを使うことで簡単にサーバリソースを利用できる。
Cloud Services | セットアップ工数 | 用途範囲 -------------- | ------------- | ---------- IaaS | 大 | なんでも PaaS | 中 | Webサービス全般 MBaaS | None | モバイルバックエンド
モバイルアプリに特化したサーバと絞り込んだことで、目的にマッチしやすいしシンプルな機能構成にできる。
割りとなんでもござれなスタンスの IaaS/PaaS に比べると、ユーザも利用用途が明確で、最初からニーズにマッチした状態で使えるので利用しやすい。
ターゲットと用途に特化すると利便性があがる好例だろう。
では、日本ユーザは何を使うか。
Parse を利用し始めているブログも見かけるが、サーバはだいたい Amazon EC2 で US-east リージョンだと思うので、レイテンシーが気になるところ。日本ユーザにやさしいのは日本にリージョンを持ちマニュアルも日本語を用意してくれている Kii Cloud あたりになるのではないか。
Titanium Mobile 環境ならば Appcelarator がCocoafishを買収して提供している Appcelerator Cloud Services (ACS) が利用しやすいだろう。