岡本太郎氏の代表的な作品として、こどもの城のオブジェや渋谷駅の巨大壁画は目にすることはあったし、子どもながらにCMで岡本太郎が「芸術は爆発だ!」と叫んだ姿はよく覚えている。
しかし、それは表面的な部分だけで実はどんな考えを持った人かはよく知らなかった。なので、岡本太郎氏自ら執筆したこの本を読んでみた。
もう一つの理由としては、2012年後半から普段あまり触れない分野から新しい刺激を得て、より自分の感性を広げてみようという取組をしていて、芸術という分野を知るためにこの本でみた、ということもある。
時代背景としては発刊が1988年だが、岡本太郎自身が18歳でフランスに留学した時が1930年くらいなので、かなり古い時代を生きてきて、おそらく大学闘争やウッドストックのような社会への反抗・抵抗が表面化していた時代の影響も受けているのだろう。
フランスに渡って以降、自分自身へ生き方の問を強烈に行い、社会に対して妥協して飲み込まれずに徹底して戦うスタンスを取る。というのが岡本太郎氏自身が定めた生き方ということらしい。
現代において「常識を疑う」ことはよく言われるし、自分自身も世間体とか何となくな定説を鵜呑みのしないよう振る舞ってきたつもりだが、岡本太郎氏の強烈さに比べればまだまだ足元にも及ばない、という感じを受けた。
文章は、ただ単に突拍子もない強烈な文章の羅列ではなく、強い意志を表しつつ論理的な展開でしっかり生き方を説明したりしている。
例えば、
挑戦した上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とではまったく天地のへだたりがある。挑戦した不成功者には、再挑戦者としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままでオリてしまったやつには新しい人生などはない。ただただ成り行きにまかせてむなしい生涯を送るにちがいないだろう。
画家という立場は絵で何かを伝えるのが上手い人という勝手なイメージがあったので、文章構成や単語の選び方がうまく文章としても端的で説得力のあるものだった。スキルの広さや思考の深さからくるものなのだろう。
古典に触れたと同時に強烈な意志を持つ生き方をまざまざと見せつけられて、「では、自分はどうなのだ」と触発されるような感覚になった。