FCバルセロナというチームは世界の中でとても異質だと思っている。
その異質さが非常に魅力的で、もっと本質を知りたくて買った本。あと、プロサッカーの世界とビジネスとの共通思想なものがある気がしていて、それを見つけてみようと思ったのも理由の一つ。
FCバルセロナは世界トップレベルののクラブチームでありながら、トップチームのレギュラーメンバの多くは小さい頃から育成機関でプレイしてきた選手であり、派手なビックプレイヤーの移籍ゲームに参加することもない。しかしながら、近年最も強いチームのポジションを得ていると思う。
プレイスタイルは、イングランドプレミアリーグが「長いパスをつなぎながら縦に早く走る」だとすれば真逆の「細かいパスを繋ぎながらゴールに迫り、最後にゴールにパスする」というイメージ。日本代表やなでしこの特徴と似ているが、そのクオリティーは非常に高く別次元で表現できていると思う。
高いクオリティーを実現しているのは育成された選手たちで、どういった手法や考え方をもって育成されてきたのか、そのヒントがわかればと思って読み始めた。
この本の説明はFCバルセロナ スクール・コーチである監訳者の解説部分に集約されている。
「イニシアチブを持って自ら見て、考え、判断し、動く(生きる)」とうメンタリティーは、サッカーというスポーツを超えて、人生そのものにおいても身に付けておきたいメンタリティーなのではないでしょうか。社会や親が決めたレールだけを歩くのではなく、自分で自分の人生を切り開き、自分が行きたい人生を歩むという精神です。このようなメンタリティーを私はサッカーを通じて子どもたちに学んでほしいと思いますし、そのためにも本書は非常に良いテキストになっていると思います。
FCバルセロナの育成機関のテクニカルディレクターである筆者が、指導者、選手(プジョル、シャビ、イニエスタ、メッシ、アンリとそうそうたる面々)、選手の親とFCバルセロナでの育成についてインタビューした結果をまとめた構成になっているが、すべての人達の語った内容は一環しており、育成思想が共通認識になっていることがわかる。その一環性は、FCバルセロナというクラブの長い歴史であり、哲学であり、育成思想になるのだろう。
その一貫した内容は、まさに人を育てるため、チームを作るための思想であることに気づく。育成機関の子どもたちは10代前後であり、一番多感で成長する時期にあたる。
私も同じような年代の子を持つ父親なのだけど、「子どもをどう育てたいか」という課題は常にあって、それは思っているだけではダメで、どう実践するかが日々試されていると思っている。
子育てのための本としても非常に参考になり、「アドバイスはOK。しかし、プレッシャーは「ノー」だ。」のような言葉にははっとさせられた。
そんな悩める父親母親たちの良いバイブルになると思う。