いきなりだが日本代表前監督イビチャ・オシムが好きだ。
今はもう日本代表監督は岡田監督をへてザッケローニ監督になり、日本の世界サッカーでのポジションもワールドカップ以降、急激に成長した。この躍進に直接関与しなかったこともあり、日本の中では過去の人になっているのかもしれない。
自分にサッカーの面白さ、奥深さ、世界視点でのサッカーを教えてくれたのはこのオシムだった。いくつかのオシムに関する本を読んできたが、この本も同じように色々なことを教えてくれる。
- 作者: イビチャオシム,Ivica Osim,長束恭行
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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書かれた時代は日本代表監督就任後、1年ほど経過したとき、脳卒中で倒れる前になる。
この本は日本でジェフ市原(現、ジェフ千葉)の監督時代から日本に住み、日本サッカーの発展を牽引してきた、オシムなりの日本に対するメッセージが詰まっている。話好きなオシムのことだから本当はもっと多くのことを述べたかったのかもしれない、それを思うとボリュームを抑えたページ数は彼の思いが凝縮された一冊だと思う。
サッカーというものへの向かい方、捉え方、世界のサッカーのトレンド、世界の中の日本というポイントで彼なりの思想、伝えたいことを示している。
日本のサッカーに携わる人達、協会、マスコミ、サポーター、ファン、それほどでもないファンがもう一つ奥深くレベルを上げてサッカーというものに取り組むときに必要なエッセンスが散りばめられている。
あくまでオシムは自分の考え方の押し付けはせず、日本人に問いかけ考えさせる。答えはこちらにあり、それを見つけだせるように促してくれる。
Jリーグが発足して以降、日本においてサッカーは市民権を得て、日本代表はワールドカップ出場、アジアカップ優勝の実績をあげてきたわけだが、そこに対して我々は何かフィーバーのような感覚で接していなかったか、相手の実力や実績を知らずに根拠なく、勝ち続けることができるような気がしていなかったか。
より相手を知って、己を知って、サッカーを知って、世界を知って、より客観的に捉えるように戒めを与えてくれる。
オシムの指摘は的確だと思う。それは彼自身、日本の文化、歴史について学んだ上で述べているからであり、文章中でも日本の歴史的背景を踏まえている部分が見つけられる。
この本を読んでからサッカーの試合を見るとなにか印象が変わっていることに気づく。試合を冷静に考えつつ見ることができて、サッカーが起きることが何か荘厳な人生の教訓を教えてくれるようなものに感じられた。
サッカーをもう一つ深い視点で見たい人、サッカーともう少し深い付き合いにしたい人にこの本を薦めたい。
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