映画の原作になったfacebookを読んでみた。
- 作者: ベン・メズリック,夏目大
- 出版社/メーカー: 青志社
- 発売日: 2010/04/06
- メディア: 単行本
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一応、本を読んだ感想を少しだけ述べておくと、
- スタートアップによくある感じのサクセスストーリーを退屈な状況描写を絡めて、架空の物語を描いているだけのお話。
- 結局、マーク・ザッカーバーグにインタビューできたわけではないので、誇張や嘘の含まれた「作られた小説」でしかない。
- 小説なので、これを読んでスタートアップを成功させるためのヒントを得ようと思わないほうがいい。なんの示唆もない。
- 読み終わった後に「で、なんだったの?」で終わる。
ちょっとだけ面白い部分もあるが、まぁよくある話だよね。で終わってしまうかな。
今年2011年1月時点で、facebookのバリュエーションは$50 Billionと言われている。
上場前としてはとんでもない数字だし、上場後はさらに上がるだろうからまったくどうなってしまうのやら。また、ユーザ数が6.5億(執筆時点)という数字もこれまたすごい。この本を読んだ後にfacebookはなぜ空前の評価額になるまではやったのか、その理由がふと思い浮かんだのでつらつらと書いてみる。
米国のトップ校発というブランドイメージ
- 「ハーバード大学のコンピュータサイエンス専攻の学生が作ったサービス」というだけで、すでにこの時点でブランドイメージは作られている。
- ブランドイメージがサービスの拡大を加速させた。
- 初期のfacebookのユーザの拡大は大学単位で、「あの大学が流行っているからうちも使いたい」になる。
- マイナーな大学の中ではやっていても、他の大学は真似しようと思わないだろう。
- 日本で言えば東大で流行って、京大も加わって、東京6大学も加わって、、、のような展開の仕方と思えばイメージしやすいだろうか。
先行実績の大きさと有利な投資条件を得る
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ユーザに課金せずFREEで提供するモデルが成功するためには、「ユーザをいかに多く獲得できるか」のみにフォーカスされるが、実際facebookは最初の資金調達を行う前の早い段階で、すでに数万のユーザを獲得していた。</p>
- ユーザ数がすべての要素を凌駕する。ユーザ数の多さが価値になる。
- このモデルは売上規模も利益も数年は出ないだろう。単月で見れば赤字が続き、毎月キャッシュを消費しつつ、それを補うために資金調達をする。
- エグジットのための条件は、とんでもなく多いユーザ数、それを支えるに必要な大量の資金(資金調達額)、バリュエーションの最大化(ベストはIPO)になる。
- 自分たちの資金も尽きそうでギリギリまで耐えて、時間をなるべく経過させバリューを上げるだけ上げる。そして有利な条件で投資を受ける。創業者の株式保有率は高く保たれる。
- 投資をしたいところは多かったが、安易に資金調達の誘いに乗らなかったのは、理にかなっている。
- このモデルのエグジットを成功させるには長い年月が必要だが、早期には売らないという創業者の信念が一貫されてきた。
絞り込みやすい狭いコミュニティがターゲット
- 初期のユーザとなる大学内の学生同士は日常的な結びつきが非常に高いし、結びつこうとする特性が元々ある。
- 寮に入っているケースが多いので、学生同士会話する機会は職場のビジネスマンより圧倒的に多い。
- 友人の間でクチコミが広がりやすい。伝搬速度はとても早い。
- 大学のメールアドレスをログインの条件にしていたことで、ユーザになれる資格が一種のプレミアム感を作り出し、乗り遅れないよう登録しようという雰囲気を生む。
米国シェアNo.1 = 世界シェアNo.1
- アメリカでダントツにはやったからこそ、他の国でも使われやすい。
- インターネットサービスにおける、「アメリカ = シリコンバレー = 世界」のイメージの強さが背景にある。
- 現に日本でもアーリーアダプターはmixiをとっくに離れfacebookメインで使っている現状。今後もこのイメージのもと日本でのシェアは伸びるだろう。
と書いてみたものの、振り返ってみれば色々言えてしまうわけで、マーク・ザッカーバーグも最初からfacebookがここまで大きくなると確信していたわけではないだろう。確かに言えることは、小さな種がここまで巨大な資本の塊に成長できるという事実で、その生まれる土壌はまだまだアメリカにある。ということだろう。
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