「外を知る」という目的で国内のクラウドイベント技評さんのG-CLOUDに行ってみた。
いろいろな観点で気づいたことがあったので、大項目に分けつつ書いてみたいと思う。
G-CLOUDというイベントについて
おそらく技評が行う初めてのクラウド系イベントだったのだと思うけど、プログラムの組み方と参加者の層を見るとエンタープライズ色が強めかなと思った。ここで言う「エンタープライズ」とは、
- 一言で言えばSIな方々
- コンシューマ向けのサービス提供をしていない
- 請負でシステムを開発もしくは提供する
- システム利用者は中大規模の国内企業
- システムは国内利用のみ、ワールドワイドでの利用は想定していない
という意味で使っている。
プログラムは「ソーシャルクラウドトラック」「エンタープライズクラウドトラック」と分かれていたが、ソーシャルクラウドトラックでもエンタープライズ向けのサービス紹介があった。
会場やイベント運用について
以下は気づいたこと。反面教師として自分が開催側になった時の教訓にしようと思う。
- 会場はさほど広くなく、でも埋まっていなかった。なぜだろう?
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ネット環境がなかったのはNG。この手のイベントはもう無線LANの環境は当然と思ったほうがいい。
- 地下の会場だったのでe-mobileは入らず
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下記の理由で、twitterのハッシュタグの利用が効果的でなくライブ感に欠けた
- ネット環境が用意されていない。携帯からとりあえずポストするだけ。タグをリアルタイムに追いにくい
- Webには記載してあるが、会場で配布される資料など目立つ場所にハッシュタグ情報が表示されていない
- 実際、ポストされたハッシュタグの数が少ない
- 必ず質問時間を設けるべき。話し終わって終了のセクションがあった。
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スピーカーにスポットライトを当て、聞く側が暗くて、会場の反応や一体感がなかった
- 会場のホテルのやり方なのだろうけど、会場がフラットな関係になっていないと聞く側も聞かなくなる。
5年以上前のやり方を踏襲しているだけなのがすごく気になったので、是非改善して欲しいと思った。
国内のクラウドサービスの進捗具合
フリービットとGMOホスティング&セキュリティの実際聞けた。IIJと富士通研究所は資料のみ
- やっていることは「仮想サーバの時間貸し」サービス
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コストが安いことをみんなアピールしていた
- コストはみんな安い方向に走るので、それ以外の特徴が知りたかった
- フリービットはVMwareを採用していると言っていたが、ライセンス費用で安さは追求しにくいはず
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フリービット
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クラウド+オプショナルなマネージメントサービスというのは、クラウドの理念から考えると矛盾していると思った</p>
- 本来はマネージしないことを求めるから雲の中に委ねるはず
- リブートが必要だけど、ユーザがスケールアップできるのはGood
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クラウド+オプショナルなマネージメントサービスというのは、クラウドの理念から考えると矛盾していると思った</p>
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GMO
- 初期費と月額固定的な料金体系はナンセンス
- まだ開発中と言っていたオートスケーリングの内容が気になる。特にどのレイヤまでフォローするのか知りたい
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CDNの連携がそんなにメリットがあるとは思えなかった
- CDNに置けるのは静的なファイルだけで、動的に生成するページは補えないから。でも、そこも扱えるのなら素晴らしいことだと思うけど、できるのか?
- 話は聞けなかったが、IIJの資料にRightScaleのテンプレートのようなWebサーバ、MySQLサーバが選べるメニューがあったが、MySQLサーバの接続先情報とか自動的に付与してくれるのかとか、詳細が気になった。
国内でクラウドサービスの提供者はサービスが始まったばかりで、未熟な機能・考え方にとどまっていると感じた。機能も専用レンタルサーバをすぐ貸出しますよ。というイメージ程度でこれをクラウドサービスと言ってしまってはクラウドの理念が腐るかと思う。今後どういう差別化と機能拡張をしていくか、聞いてみたいところだった。これが描けないと価格の叩き合いにのまれてつぶれるだけだと思う。
GREE, Amazon+利用者の話が魅力的だった
GREEのCTO藤本さんの話は、Webサービス提供者として、クラウドに何を期待しているか、自ら取り組む場合どう考えているかが聞けた。
気になっていたのは、日本で規模の大きいインフラをすでに持って運用しているポジションにいる人が、クラウドに対してどう思っているかだった。なぜかというと、Zyngaみたいに大きいけれどEC2使っているケースはまだ日本ではなく、自前でサーバ買ってデータセンタで動かしている方がほとんどで、そもそもクラウドを利用したいのか、どの部分がクリアできれば実際移行の可能性が出てくるのかが知りたかったから。
「Webサービス開発者がサービスだけに集中できるサービスプラットフォーム」が理想で、これが実現できたら素晴らしいと話されていた。PaaSのレイヤに属し、自動セットアップやスケーラブルであることのようだ。
これはニヤリだった。まさにfluxflexはそういうサービスを実現しようとしているから。GREEにどんなシステムがあるかは不明だし、アプリケーションがたくさん複雑につながると困ってしまうのだけど、コンセプトはGREEの規模であってもマッチすることが確認できた。
あと、GREEがAmazonやGAEのようなクラウドサービスを提供する可能性としては、現状を聞く限り5年以上先 or やらない感じがした。
やはり、充実した内容のプレゼンだったのはAmazonだった。クラウドサービスと名乗る他社との差は圧倒的だった。
- 機能の豊富さ: EC2/S3だけではないというアピールをちゃんとしていた
- 取り組み方: 日本語ブログやStartup Challenge
- 実績: 多くのサービスを海外と日本でもたくさんあるよ
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2つの事例: AWSの機能を利用しつつ、それなりの規模で運用し続けている。運用できる証拠を示した
- モバツイはAutoScalingは使ってなさそうだった。gumiは自前で仕組みを持っていたはず。
(もし日本でEC2が利用出来るようになるとしてw)今後日本のユーザが増えるのは必然のように思えた。すでに利用されているモバツイ、gumiの話は確かな実績だし、まだそこに到達出来ていない人には何か次元の違う話のように感じただろう。話をした2名とエンタープライズな方々とはユーザドメインやビジネスのスタンスも異なるので、その差がそのままクラウドの利用実績につながっているようで、この比較に気づいたことはすごく面白かった。
まとめ
国内でもクラウドサービスが提供されたという状況だが、AWSの優位はまったく変わらない。国内クラウドがAWSのレベルになるにはあと、3年以上はかかる or そこまで目指さないのではないかと思う。
ユーザを昔からの付き合いという、旧石器時代的な要素だけでとどめることはもうなくなっているので、エンタープライズな方向けだとはいえ、国内クラウドサービスをやっています、と言っている方々は本気で考えアクションしないと、足元すくわれちゃうなぁと感じたイベントでしたと。