- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: ハードカバー
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今、日常過ごす上で利用しているネットサービスは Gmail、Evernote、Remember The Milk、Googleカレンダー、はてなブックマーク、Twitterなどなど色々あるが、そのうち半分以上は無料で利用している。本当は課金しなくても利用出来るものもあるけど、開発者への感謝の意味も込めて課金ユーザになったサービスもある。
これらのネットサービスを利用している時には気にしていないけれども、ちょっと立ち止まって考えてみると、これだけ便利で豊富な機能を持つサービスを無料で利用できるなんて昔では信じられないくらい結構すごいことだと気づく。なんでそんなことが出来ているんだろう、と不思議に思う。
この本はその不思議について解明している本だと言える。
インターネットの力で大きな変化が確実に起きている。この大きな変化を説明している本は実は少ない。テレビ、雑誌ではまったく出てこない。いまだに日本のテレビは、よく分からないものとしてインターネットそのものを正面から捉えようとしない。そいういう意味でこの本を今読むことは貴重だ。
自分にとって大きな変化を確信づけた最初の本は「ウェブ進化論」だったわけだけど、この本もそれと同じ位置づけになる。同時に30際以下のネット世代の人にこの話しをしても、しごく当たり前のこととして扱われてしまうだろう。これも「ウェブ進化論」と共通している。これも1つの面白い現象だと思う。
「ロングテール」でも思うのだが、クリス・アンダーソンはこの不思議に思う個々の現象から、大きな流として捉えるのがうまい。現役の経済学者が真っ先に論じていないところが面白い(おそらく既存の知識や文化に埋没すると新しいものが受け入れがたくなる。それだけ新しい変化は新しいものが生まれる可能性を広げやすい。)。そいういう意味ではクリス・アンダーソンはネットの最先端の経済学者だと思う。主な実務は編集長だけど。
この本はネットサービスにとどまらず、過去無料で提供してきたあらゆるものについて解説している。なので、ラジオや雑誌、テレビについても歴史を踏まえつつ紹介している。
この本で述べられている主な点は以下。
- 21世紀の新しいフリーの形が生まれた
- 新しい形のフリーはまったく新しい経済モデルになる
- デジタルのものは必ず無料になる
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著作権の保護の仕組みはいつかは壊される
- なぜならデジタルのものはフリーになりたがるから
- 保護するのではなくフリーにして流通させることをすすめいている
- サービスの運用コストが非常に低いので、数%の有料ユーザによってサービスが成り立つことが可能
なぜ、デジタルは無料になっていくのかというと、CPU、ストレージ、通信帯域の能力が上がり続けている背景がある。その根底にはムーアの法則があり、その法則の確実な実績によって必要なコストがどんどん下がり、ユーザ一人当たりのコストは無視できるほど小さくなる。ということだ。
この本でも述べられている通り、フリーは魔法のツールではないのでそれだけでは成功しない。デジタルにおけるフリーを活用して、どうやってお金を生み出すのかというのは、それを活用しようとする人たちの知恵に掛かっている。実際Googleは Adwords、Adsense という広告と結びつけることによって大きな富を生み出した。
紹介されている多くの事例から思うに、これは従来のマーケティングの感覚で発想するのは不可能で、デジタルへの絶対的な信頼と発想するセンスが必要かと思う。これは新しいスキルなんだろうし、実際Google、Amazonにはそいういう発想ができる人間が揃っているのだろうなぁと想像できる。
この新しいセンスを身につけるには、ネットサービスを実際運営してみてユーザ動向を感じるところからなのだろう。新しいものは学問として学ぶよりも実際の現象が教えてくれることから始まると思うし、まさにインターネットはそんなことの連続をいくつも起こしてきた分野だと思う。
ネットは飽和したとの指摘もあるが、この新しい考え方を実践するのはまだまだこれからで、市場へ与えるインパクトの可能性はまだまだありそうだと感じられた本だった。
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