梅田望夫さんの会社 ミューズ・アソシエイツ のオフィスでの1.5hのお話し合い。12名のJTPAシリコンバレーカンファレンス参加者で伺った。
なるべくこの日のことを忘れずにいたいので、つたないメモも記述しておく。
オフィスビルの周りにサクラが咲いていた
ここ3年くらいの自分にとって最も影響を与えてくれた梅田望夫さんとの直接のお話は願ってもない機会で、何を話そうか色々考えたが以下の2点を聞こうと思った。
- 今自分が考えていること、振る舞い方を伝えた時に何が返ってくるか
-
梅田さんが今何を考えているか
- ウェブ進化論が出てから3年、ウェブ時代をゆくが出てから2年がすぎているので
- この経済状況の悪化の中で何を思うかはまた違っているはず
自分の用意していた事前メモ
- インターネットの上で群衆の英知にゆだね、自ら発信することで生きていけると思っている
- その可能性にかけて独立した 35歳までに起業というイメージもあった
- 自分がどこまでできるのか、すべてのスキルをためしてみるため
- 独立は自己実現の最終形と思っている
-
現状はまだインターネットの力を生かし切れていない
- 実際は SI 案件が多い、その先にコンシューマがいるケースもあるが
- もっと発信する必要があると思っている
- ゆくゆくはコンシューマ向けサービスに発展できれば
- 情報の整理から、ノウハウの集結、ノウハウの取得へ
- 一人の力は小さい、webは最大限にしてくれる
- 最近一人で出てきている人があまり見ないようになってきた
- 違う形態になってくるのか、何かが変わってきているのか
- 一人でやっている人たちもいるが、ちょっと違うように思う コンシューマに向いてない、日本だから?
当日メモ
オフィスに入ると会議室に通されホワイトボードにいくつかのこのミーティングを進めるための決めごとが書いてあった。
- 自己紹介
- カンファレンス参加の目的、今日ここにきた目的
を参加者一通りして、司会者 id:katsu8 を決めてからスタート
梅田さんは今何を思っているのか
- 今サバティカルを取っている 今空っぽ 45年間分すべてを出し切った状態
- 2年間取材して、2.5年で7冊書いた
- 理由があって沈黙している訳ではない
-
世界不況 世界はどうなっていくのだろう 朝から晩まで考えている
- そういう中でどうやって生きていくか ずっと考えている
- 自分の力と時代の力のかけ算になって何かがあって何かができる
-
ITの世界は明らかに成熟した # 言い切った
- ハイエンドにいっても誰も使えない
-
オープンソース、半導体、チップも最先端ではないとんでもなくすばらしいことをもたらした
- が、それを使いこなせない
自分の力と時代の力
- 自分は時代の流れに乗ってここまできた 時代の力が結構大きかった
- 日本の力もあった 1980年代
-
自分の力 x 時代の力 x 日本の力
- 日本の力は衰退して今は期待できない
- 自分の力の比率が高くなる 力がある人は生きていける
- 今自分の力を強くする道具はそろっている
- 自分の勤勉さと戦略性 によってずいぶん差が出てきてしまう
- 昔より全然意識が高い若者がいる 道具があるからがんばってほしい
- 自分が発信すると返ってくる 人脈になる
- なんとなくやってたら最終的に行き着いたのがここだった
- 近い思考の人たちが多かった
日本について
-
日本は上の子を甘やかすから</p>
- こちらは優秀だと選択肢がある
- 将来を台無しにするオファーが多い
- スケールの大きな視点で考えればいいのでは
QA
-
Q1 英語の壁を越えられるのか</p>
- 5%がいいもの出せればと書いたが出てない
- 英語圏は実名で出てきているから、くだらないものが淘汰させられる
- 日本は低俗なところがフォーカスされる
- 本は売れた コンセプトは届いたが、若い人はやってない3年たって
- 英語圏はもっと先に行った
- 大衆向けのサービス DeNA, GREE は期待したところになってない
- 戦略的な大きな流れ 一度日本で作って戻るものあり
- 留学したかった
- 一度留学して出て、日本で活躍するのもあり
- 供給者は成熟した、利用者側はまだまだ
- 道具がそろっているがビジネスは生まれない
- 利用者の成熟してない場所、地域ならばあるのでは
- 企業の理念の枠組みを超えることになる
- ITの利用価値が変わるのだろう
- 日本の中間層が分厚くって アメリカのセンスの違い 能力は同じ
- こちらはアカデミックな中にビジネスもある
- 日本では議論がない 組織を超えた あるコンセンサスを得るために議論がある
- 優れた人の意見が通る 上下関係がはっきりするエンジニアならなおさら
-
Q2-1 日本のサービスを売る場合 世界に対して商流が生まれるのか
- アメリカなら0からかなりのスピードで動ける 特に BtoB なら
- 人が動くにつきる 日本は人が動かない
- アドバイスは誰でもできる 口だけは
-
VCは人をつれてきてくれる
- 例えば vice president of sales 級の人をつれてくるとか
- 実績ある人をつれてきてくれる
- VC弱小なものはお金だけ何もしてくれない
- シリコンバレーは必要なリソースをそろえられる環境がある そのメカニズムが働く時に成功する
- それまでは予選 その先が本戦 それ以降うまく行かない場合もある
-
Q2-2 はてなが来たこととシリコンバレーのルールはマッチしていないのでは (かなり意訳)
- 彼(jkondo)がこっちに自発的に来た
- ここに来るということは会社をかけた勝負をするかどうか 日本は会社をかけなくても生きていける
- ここでは大きな流れに乗ることを意味する
- ここだとベンチャーをやることは関係者全員のものになる 創業者のものではなくなる
- ここでやること どういう勝負をするかどうか
- 日本の実績は意味なし ここでは 0 からやる
-
日本である程度大きくなってからこっちで成功を目指すというのは難しい
- # 自分も何となく思っていたことが確信してしまって梅田さんとその場共感してしまった
- ここにはこなきゃルールは分からない
- 失うモノが大きいゲーム
- 日本のVCは創業者を大変甘やかす
- 創業者が変わらないのはコモディティだと思われる こっちだと
- ここは納得ずくめのゲームをする 変わるのはしょうがないこと
- 成功確率が低い 若いからできる
- 現場ではワーっとやっている感じ
- モノが語ってくれた 日本初グローバリゼーション
-
モノだから言葉がいらなかった
- 車、電機メーカ
- 日本の供給者は先先に行きたがる、利用者はここでいいと思っている
- マーケティングがダメ モノが語ってくれるから ちゃんとマーケティングすればよかった
- 日本人の雇用だけを考える これもやりたくない
-
Q3 アジアってどうでしょう
- 今後どうでしょう
- 日本のITの世界でダメだったね 最先端ハイテクの世界では
- 日本初アジアで活用する側でIT以外の分野でもいける
- 食品産業とか
- 自分がどうやって生きていくか 個人
-
Q4 地方の活性化のために web を活用できないか
-
web サービスは一人当たりの儲けが少ない ニッチ形だと厳しい</p>
- ただに近いから
- リアルなものをもっと良くしてきたいからITを使えばいい
- webサービスは利用者は多くないと成り立たない
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webサービスは100万人にもっとさせたいということを毎日考えるような感じ
- 1億5000万人を支えている感覚 facebook とかみると 無情の成功を感じる
- 中途半端に陥りやすい
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web サービスは一人当たりの儲けが少ない ニッチ形だと厳しい</p>
産学連携について
- ビジネスアイデアがない人が仕組みの話を延々としている人が日本には多い
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自分ががやっているVCで唯一成功した会社で日系人がいるが考え抜いて
- 考えに考え抜いていた すべての質問の答えていた
- what がないのが致命的
- そのアイデアがあるかどうか アイデアない人は起業しない方がいい
- museassoc 立ち上げたときはどんな質問にも答えられていた
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振り返って成功、偶然良かったというがその時は思っていただけ 先のことは分からないから
- # やることはやっているからという意味かな
参加者のみんなと
そこで自分が思ったこと
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シリコンバレーでベンチャーでいることは明確なルールに沿ってゲームをすることに他ならない</p>
- そのルールに乗るからこそ大きな成功をおさめられるという経験がすでにこの地にはある
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明確なルールとは VC が必要なリソース(資金、人、戦略)をすべて用意してくれて急速にサービスと会社を大きくしていく
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VCに売り込む時点で会社は創業者のものからみんなものもになることを分かってないといけない</p>
- ビジネスモデルが変わること 思ったようにできなくなることは創業者は覚悟しなくてはいけない
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VCに売り込む時点で会社は創業者のものからみんなものもになることを分かってないといけない</p>
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今年2月に会社を作ったが、なぜサービスを作って資金を募らなかったのか、一人でスタートさせたのか。その時は時代の臭いをかいでなかば本能的に決めたけど、それはすごく正解だったことが分かった
- 資金を入れることはゲームに乗ることになることなのでそれを今は避けようと思っていた
- 今はビジネスモデルやサービスアイデアを練るための材料集めとしてライフカンパニーでよいと思えた
- この話を聞いた後に実際何をするかが自分に試される
- 自分自身の戦略性を磨こう 会社としてのTODOは常に挙げているがもっと俯瞰的にみて描いたものを追加する必要を感じた
梅田さんオフィスを後にした時にきれいな青空と飛行機雲に出会った
右端の灰色な低層ビルの1部屋が梅田さんオフィス
シリコンバレーの田舎町は本当に底抜けに明るい天気と素敵な風景を持っている
ミーティングを終えて
念願の梅田さんに会えて思ったことは、梅田望夫という人間に触れて本当に良かったということだった。
今まで10年ほど働いてきて、進んできた道への振り返りとここ数年の身の振り方に本当に大きな勇気と実行力を与えてくれた本を書いた人として感謝していたし、論理的で的確な単語を用いて軽くない文章を書けることにあこがれを持っていた。
本当は自分自身の力をいかに出せるかが大事なことなのに、会社をスタートさせた後の指南とか、この経済不況でもうまく生きていける何かを話してくれるのでは。とか、何かうまいことを言ってくれて助けてくれるのでは。のような感覚になってしまっていた自分が少しいた気がする。それは尊敬ではなくて崇拝に近かった感覚で、誰かがAと言えばAをするような主体性のない危ない状態だった。
梅田さんはこの経済状況の不透明感、ITでの日本と世界の差を見て、自分が予測と希望を持って提示したものがそうではなくなっている現状を悩んでいるように見えた。まだきれいな答えは見えておらず考え続けている最中のようだった。
その悩んでいる姿、言葉から人柄であるまじめさや堅実さに直接触れられた気がして、自分も同じように同じくらい悩み、考えることが必要だったのだなと反省した。
これからに対して一つヒントになるとすれば、時代の力、日本の力は期待できないとなると 自分の力 をいかにのばしていけるか。時代の力が戻った時に自分の力と掛け合わせていかに大きな力を生み出せるようになるか。今はその準備段階なのではと思えた。だから留学を進めるのではとも思った(留学すれば少なくとも数年は大学に属し働かない状態を作ることができる)。
そして自分は自分の会社をどうしていこうか、いやもう一度シリコンバレーの地を踏むにはどうすればいいのか。それはベンチャーとしてゲームに乗る覚悟を決めたときなのか、ライフカンパニーとして小さくともこの地で生きていくことを選ぶのか。どちらの形態でいつ実現させるかも分からないまま、もう一度この底抜けに明るい天気の元に戻ってきたいなと単純に思っている自分がいた。