芸術起業論


芸術起業論

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絵画をわざわざ見に行く習慣がない自分には芸術という世界は、何か感覚的なものが価値になっているという点でかなり縁遠い業界かと思っていた。

この本を読んでみて始めて分かったのは、そんな主観的な扱いをして作品の評価基準があやふやなイメージになっているのは日本だけで、本場の欧米のアート業界はお金が回るためのフレームワークと明確なルールがちゃんとあって、アーティストはそのフィールドの中で戦略的な振る舞いをして作品の価値を最大化することを狙っている。

これは芸術というフィールドではあるが、巨大なお金の回るマーケット上のビジネスであって、アーティストは絵がうまいとかそういう次元でなく、作品の背景を思考し、周りの人を動かし、プレゼンテーションする、まさに起業家なのだと。なるほどまさに「芸術起業論」のタイトル通りだと思った。

この本は単なる芸術業界のお話ではなく、自分が後ろ盾がない状態からどうやって生きていくか、また競争の激しい評価がつきまとう環境の中で、いかにして成功していくか、一人の人間がビジネスの舞台で本当に勝負するための思考、割り切り、実践を示していると言っていいと思う。

業界は違えど、ネットの世界でスタートアップしたばかりの自分と重なる点があった。

作品の歴史的な背景を知り、意味付けをして客観的評価を高めていくことは、ビジネスプランを作ることと全く同じ。ひとつのアイデアだったものが、客観的評価を得るには思いつきのレベルでは資金を得ることはできないし、それはビジネスの土台すらのっていないことになる。

シリコンバレーというフィールドも同じだなぁと思う。ひとつのサービスが大きな富を生むようになるために、最初に何が必要かを確かめるために実際現地に入ったが、単にアイデアもしくは作ったものの紹介止まりではやはりそれは単なる思いつき、個人の趣味レベルの話。創業者に求められることはそこから先にビジネスとしてどう意味付けをして、可能性を示してサービスの価値を高く思わせるかということにつきるように思える。さらにシリコンバレーではトラックレコードや強烈なコネクションがないとスタートアップが順風満帆に最初から資金を取り付けてスタートするのは難しい。

もうひとつの共通点は、日本の芸術の世界でも評価を曖昧にしたまま、生きて行けてしまう人たちがたくさんいるということ。これは世界のトップの舞台ではいない人たちで日本のITの業界でも同じ。日本のベンチャーでは余りない傾向だと思いたいが、昔からの大企業、それに依存するだけの中小企業ではまだまだ根深いところだろう。

もう自分はそういう世界にいた経験を反面教師にして今は埋没しない場所に立っているが、入ってくる情報の中に変わらずに壊れていない部分が見えるたびにすごいフラストレーションを感じる。自分の問題というよりも、フラストレーションを自分は絶対そうならないというモチベーションにしているのは村上氏も同じだった。

最近、日本人が世界の舞台で本当に勝負していくためには、どう振舞うことが必要なのだろうと考えていて、この本の中でもそのふるまい方が具体的に紹介されていた。自分が出した結論と大まかには村上氏も同じで、すでに村上氏は実際作品の価値を作るために利用してきていた。それは、いくら日本を出て現地に飛び込んでも日本人であることは捨てきれず、むしろそれを新鮮なアピールポイントにしたほうがいい、むしろ利用しないことにはその他大勢に埋没してしまう、ということだった。本場にはない日本だけが持っている特徴もしくはまだ知られていないポイント、これらは本場にはまだ浸透していない特徴であり新しさになるので、取り込もうとするから差別化のポイントになりやすいだろう。これはこれからの自分の振舞い方で利用の仕方を模索したいところだった。

世界のフィールドでビジネスを展開し始めようとする自分にとっては、先駆者としての村上氏の意識の共通点があったことが嬉しかったし、苦悩しながらつかんできた実践は生きたガイドラインになると思う。

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