社長失格 – 板倉雄一郎


不格好経営 で登場していた本で、当時のベンチャーの実情が赤裸々に語られているらしいので読んでみた。

読み終わる直前くらいに Kindle 版が出て、そっちを買いたかった。が、早めにこの本に出会えてよかったなと思う。


社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

この本はハイパーネットを立ち上げ時代から注目され、そして倒産し自己破産もされた板倉雄一郎さんが当時の様子を赤裸々に書いている。論理的思考や説明をとうとうと述べるビジネス書が数多くある中、ビジネスの当事者が書いた本は非常に少なく貴重あり、実際この本は非常に売れている。
数々の出来事がめまぐるしく起きては変化していく様をしっかり描写してくれているので、ベンチャーの緊迫したスピード感を味わうことができるだろう。実際、ハイパーシステム誕生後1.5年で倒産しているので、まさにジェットコースターのような時間の流れのように思える。

本書の核となるハイパーシステムが舞台となる時代背景は1995年〜1997年12月までであり、当時はブロードバンド時代の前、ちょうどインターネットが登場してダイヤルアップでモデム接続し、ベンチャーなる存在が生まれて相当な注目がされた時代、まさに日本のインターネット時代の幕開けになる。
なので、ビジネスモデルやベンチャーを取り巻く環境は現代と大きく異なるので、同じ手法を参考にしようと思わないほうが良いだろう。そもそも、失敗の経験談なので、同じことを繰り返さないという失敗から学ぶスタイルで読み進めるとかなり参考になる。

当時は大学生だった自分は、おそらくハイパーシステムを使った事があると思う。
インターネットはやりたかったけどプロバイダーに払うお金がなかったので、無料で使えるプロバイダーとしてCD-ROMをもらってインストールして使った気がする。
接続すると広告が集まった縦長のバナーのウインドウがブラウザの横に表示されながら、ネットサーフィンをしたと思う。

なぜ、ハイパーネットは倒産し、板倉さんは自己破産してしまったのか。その原因を考えると客観的にみれば、過剰投資、サービスの発展に即していない大きすぎる目標、高すぎる開発費と設備費、貸し剥がしなどが挙げられる。

決して1つの会社の創業者の振る舞いがまずかったわけではなくて、銀行が積極的にベンチャーに投資し始めたタイミングと逆に銀行が弱まって潰れ始めるタイミングにバッチリ重なってしまった。言わば時代の力に翻弄されてしまったことが一番の原因だと思う。
しかし、そんな時代の流れはあとから言えることで、当事者にしてみれば目の前の危機に対して必死に解決しようと努力し続けるしかないわけで、実際板倉さんは努力をした。が結果的に倒産した。致し方ないところがあると思う。

自分がこの本を読み終わって、今後の起業に対して何を生かしていくか挙げてみる。

  1. 銀行からの融資は受けない
    • 銀行は投資ではなく貸したお金は必ず返すというスタンスの存在で、不確実なベンチャーの事業投資の性格と一致しないため
  2. 個人保証はしない
    • これも同じで、事業の成長を見越してその会社に投資するわけで、そこで個人の返済義務が必要になることはない
  3. サービスの成長ステージに合った資金調達をする(過剰な資金調達はしない)
    • 景気が良い時はお金を貸したがる人たちが多くなり資金を得やすくなるが、自分の今いるステージから1つあがる分の資金調達を繰り返すべき
  4. グローバルマーケットへのアプローチは1つの地域での実績を得てから行う
    • グローバル展開はその地域の特徴も踏まえ、テンプレート化したビジネススキームが必要。スキームが見えない段階で複数地域にアプローチしても混乱する。
  5. コアの事業スタンスを変えない
    • 本書では広告パブリッシャーから途中、OEMのライセンス提供もしたりしている。誰に売るのかの部分が変化してしまうと、事業そのものが変わってしまう。変わるべきと判断したら新サービスのようにはっきり変える方が良いのでは。

以上のようなことを強く思った。今後の糧にしていきたい。

さて、この本を読み終え、創業者として疲弊しきった心理描写、自己破産という最悪の結果を見て、それでも自分は創業者としてサービスを作りたいんだと思えれば、それはそれでよし。覚悟のリトマス試験紙になる。

板倉さんは最近「社長復活」という本を出された。どんな過程でモチベーションが上がったのか、失敗の経験をどう総括しているのか。すごく知りたい。Kindle でこれから読む予定。読み終わったまたレビューする。