最高の人材を見いだす技術 – ラスムス・アンカーセン


スポーツから学ぶことは多いと思う。特にトップレベルの選手たちが行なっていること、環境、思考ははとても興味があった。
仕事を突き詰めていくとアスリートのような意識になって、体調/マインドセット/環境/モチベーションを自分なりに整えておく必要を感じる。
また、インターネットビジネスは結局人が生産工場でもありオペレーションもするという意味で、人の依存度がほぼ100%の世界。人の成長や高いパフォーマンスを作り出すのは共通している課題だと思って読んでみた。

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トップアスリート量産地に学ぶ 最高の人材を見いだす技術

この本は筆者がトップアスリートを量産している地域に滞在し、コーチや選手にインタビューした内容を紹介している。単なる紹介にとどまらず、そこから導き出される結論から研究データを紹介したり、ビジネスシーンにあてはめて説明してくれていたりする。
そういことからスポーツ育成術の本ではなく「トップレベルを目指すために何が必要か」という普遍的なテーマを扱っていると言える。

読んでみて自分なりの結論を整理してみる。

  • 魔法のような秘密のトレーニング方法は一切ない
  • トップになるには1万時間(競技によっては2万時間)以上のトレーニングが必要
  • 単純に好きというレベルではなくもっと切実な背景があるとそれだけに集中しやすい
    • 貧困などの切実な状況から抜け出す手段など
  • 設備や環境が整いすぎるとその状況が成功と感じてトップレベルに到達できなくなる
  • 非団体競技でも競争心をもたせるチームトレーニングは効果的
  • 小さい頃からのトレーニングにおいては親の積極的な関わりが不可欠
  • 最終的には根性のような強い意志、踏ん張る力が必要

根性(モチベーション) > 練習時間 > 環境(設備、親) > 才能・遺伝

のような依存関係がある。才能と遺伝の依存度はほとんどないと思ったほうが良い。
また、多額の資金を投入してもトップレベルにはならないことがはっきり結論付けられるのが、非常に興味深い。
現代の日本を含めた先進国では何かを成長させたい時に、充分な資金を投下すれば良い結果が得られるすぐ発想しがち。
ある程度は必要だが、過度な資金は逆効果になる。これが面白い。

根性論や精神論は科学的ではない気がして、それを振りかざすのは好きではないが、いろいろな条件が整って1つの要素として扱われてるので、本書では精神的な部分も科学的に捉えることができると思う。

何かインターネットサービス、ベンチャー、スタートアップは1つのサービスをリリースした途端に急成長して成功を収められるようなイメージが根強いし、それを目指して振舞っている人が多い気がする。
自分としてはこの幻想への違和感を感じてきていたし、大きな成功を手にするには良いパフォーマンスを長い時間継続することが必要条件だと感じていた。ぽっと出たものがぱっとなるが嘘であることを、1万時間(競技によっては2万時間)というトップアスリートたちがこなしてきたトレーニング時間が教えてくれる。

たとえダイヤの原石だとしても、努力することなしには成し得ない。むしろ努力することこそがダイヤとして輝けるたった1つの条件であることをこの本は教えてくれる。

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