ロングテール


クリス・アンダーソンのFREEは読んだのだけど、実はその元の位置づけとなるロングテールはちゃんと読んだことはなかった。

ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice)

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この本はおなじみのロングテール曲線についての解説ではなく、ロングテール曲線を描けるサービスが実際に存在したことによって、従来のヘッドの部分だけを見ていた者たちが衰退していく傾向にあることを解説している。そういう意味では世の中の大きな変化を具体的に見ながら解説してくれている本と言える。様々なデータや分野から実例を示しながら細かく解説しているので、ロングテールが及ぼすインパクトを概念的でなく実感として感じやすいだろう。

ロングテール自体の意味は他の本でも紹介されているので概要は理解していたが、世の中へのインパクトはどんなところにあるのかを理解したい場合は、やはりこの本を読むことで得られると思う。

ロングテール曲線の詳細について知らなかったこととして、あのおなじみの曲線は、テールの先の方に行ってもミクロの範囲ではロングテール曲線を示している、というのは面白いことだと思った。結局、人の好は限界がなく、数は少ないながらもニッチなものが永遠と続いていく。

読み終わって思うのは、映画・音楽・テレビ(民放は特に)に携わる人達はこれから大変だなぁと人ごとながら危機感を感じる。特にマーケティングという立場にいる人達にとっては、従来とは正反対の考え方に変化することを求められていのがはっきりしているということだ。これを自覚しているマーケティング担当者は青くなって勉強し直すのだろう。残念ながらまだ考え方を入れ替えられていない自称 or 従来のマーケティング担当者の方が圧倒的に多いと思うけど。

結局、特定の作品なりをオススメとして露出を増やして売上をあげる。という方法はもう効果が上がらないし、今後は下がる一方と分かっている。そもそも作品を特定するのは売り込む側から購入する側であるユーザに権利が移ったので、「オススメする」から「ゆだねて選んでもらう」というスタンスに変わる必要がある。だから正反対の考え方が必要。

ユーザが「自分の好みの作品を選んで買う」いうこの状況はすごく健全で、本質的なことだと思う。今までは環境がなかったことで、特定の情報だけを選ぶために選別する人が売る側に必要だっただけだ。

ユーザは逆にオススメを鵜呑みにせずに、自分は何が好きか、どんなものを求めているかを考える必要がある。この視点の延長で、自分の振る舞い方と照らすべき、良い文章に出会えたので引用する。

確かにネット上に完全に信頼のおける情報というものはないので、どれだけの情報源にあたって最終的な判断を下すかは本人次第だ。だから何が正当かは当然決まっているとか、絶対に間違えない組織があると信じて自分を甘やかす時代は終わり、混沌とした情報の渦の中で調べて考えることを要求される —-そうすれば報われる—- 時代が来たのである。

クリス・アンダーソンはネットに生きているなぁと思う。こういう生き方・振る舞い方に直接響く文章は本当に良い。言い切れることも素晴らしいし、実はネットに対するこういう筋の通った文章を提示している人は本当に少ないと思う。

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